朝食から始まる"心の再生物語" - 瀬戸朝香主演ドラマ『朝食亭』

WOWOWでは2月28日(土)にドラマW『朝食亭』(20:00～)を放送する。10人の他人同士が、ある食堂で毎朝、朝食を囲み、それぞれが抱える傷や悩みを乗り越え、明るく生きていこうとするヒューマンストーリーだ。今回は、ドラマの担当プロデューサーに話を伺い、同作の魅力に迫ってみた。

『朝食亭』ストーリー

東京の下町・谷中にある食堂「朝食亭」では、毎朝、開店前に、近所に住む10人の老若男女が集まって朝食をとっていた。それぞれが、ある事情を抱えていたが、皆で朝食をとることで、多くを語らずとも心が癒されていたのだった。そんなある日のこと、4年前に「朝食亭」の跡取り息子・清彦(池内博之)を飲酒運転で轢き殺した犯人が、4日後に刑務所を出所することがわかる。清彦は、雨の路上で倒れたまま、ある言葉を言い残して息絶えたのだ。それは結婚を心に決めた女性への遺言であった。しかし、それが『朝食亭』に毎朝通うOLの美沙子(瀬戸朝香)にあてた言葉だったことは、『朝食亭』の主人夫婦でさえ知らなかった。美沙子には自分が清彦の恋人だと名乗り出られない、ある事情があった。

メルヘン性があり、サスペンス性もある物語にしたかった

生まれも違えば育ちも違う10人の老若男女が毎朝、朝食を囲む。この現実的には有り得ない設定から、どのような物語が展開するのか。釜谷正一郎プロデューサー(以下、釜谷P)は、"メルヘンとサスペンス"を楽しんでほしいという。

「原作は、メルヘン性に富んだ話なんです。朝食を、何のゆかりもない10人の老若男女が毎朝、食べるという現実的には有り得ないこと。ただ、『こういうことがあったらいいな』と思ってもらえるような物語にしたかった。ただ、"いい話"だけだと2時間を飽きずに見ていただくことは難しいと考え、サスペンス性も盛り込みました。感動もできるし最後まで物語がどう転ぶかわからない、そういう物語にしようと、このドラマを企画したんです」

主演は、結婚後も女優として輝き続ける瀬戸朝香。芯の強い女性を演じることが多い瀬戸だが、釜谷Pは起用理由をこう語る。

「単にキレイなだけではなくて、後ろ姿を撮った時に何かしら謎を感じさせる女性、ということで最初にイメージしたのが瀬戸さんでした。他の登場人物の9人が、彼女にどういった謎があるんだろうか、興味を持つような魅力的な女性にしたかったんです」

ただ、"謎を感じさせる女性"という設定に、瀬戸は役作りの面でいろいろと工夫を重ねていたようだ。

「最初、瀬戸さんは『美沙子はどういった女性なのだろうか』と、かなり考えていたようです。美沙子にある"影"はセリフには出てこない部分。そこの演じ方については、監督といろいろと相談されていました」。

そんな美沙子の謎が徐々に明らかになっていく一方、「朝食亭」の跡取り息子である清彦の死をきっかけに、他の9人の影も見え始める。物語は瀬戸が演じるヒロイン・美沙子を中心に描かれるが、他のメンバーの謎が美沙子の影に絡まっていくことになる。

「冒頭で池内博之さんが演じる「朝食亭」の息子が車にひかれて命を落とします。その時に、何らかの言葉を言い残して、死ぬわけです。それが何だったのか、そして、誰に向けられた言葉だったのか、これが徐々に解き明かされていくという話になっています。それがわかった時に10人がどういう思いになるのか。これが見どころの一つですね」

影を抱える10人の心の動きをどう見せていくのか。脚本作りにおいても工夫をしたという。

「よく見ていただくとわかると思うんですが、それぞれの登場人物について『あれ?』という部分が必ず1つあるんです。見ている時は、登場人物がどうしてそういった行動をとるのかということを、後半になって『あぁ、そうだったのか』となる。それも全員です。前半に伏線をいくつも張って、それが後半になって一つにまとまっていくという展開ですね」

主人公の他の出演者の演技にも注目したい。例えばタクシーの運転手・佐藤を演じる 田山涼成の存在が光る。

「田山さんは、『芝居中に本当に泣いた』とおっしゃっていました。『この役は自分の性格に似ているキャラクターだ』とも。おそらく登場人物の中で一番明るいのは田山さんが演じる佐藤です。ところが……という展開。そういう意味で、イメージとして、明るく陽気な田山さんにあえて演じていただいたんです」

この佐藤。ひとり娘を亡くしており、その死と美沙子との関係を探り始めるのだ。美沙子の謎を解くカギが佐藤にはありそうだが……。その他の登場人物も皆、様々な謎を持っている。それが主人公・美沙子とどう絡んでいるのか？そこは本編をご覧になって確認していただきたい。