グーグルは23日、同社が運営する動画投稿サイト「YouTube」において、「コンテンツIDシステム」を今後普及させていく方針を明らかにした。同システムは、コンテンツホルダーが著作権を保有する動画のコピーを投稿されても、コンテンツホルダーが広告を通じて収益を得ることができる仕組み。同様のシステムをYouTubeほど大きなサイトで行うのは初のケースという。

著作権を保有する動画のコピーを投稿されても、コンテンツホルダーが広告を通じて収益を得ることができる「コンテンツIDシステム」概略図

YouTubeでは、ユーザーが投稿する動画に関し、著作権やコンテンツホルダーを保護するさまざまな対策を行っており、「コンテンツIDシステム」もその一つ。

同システムではまず、同社のコンテンツパートナーが著作権を持つ動画をYouTube側に登録し、リファレンス用の「IDファイル」を生成。1分間に15時間分アップロードされているというユーザーの投稿動画も全てIDファイル化し、両者が同じ動画かどうかを自動的に照合。同じと判断されれば、コンテンツパートナーに報告する仕組み。

報告があった場合、コンテンツパートナーは、「ブロック」「トラック」「マネタイズ」の3つのオプションから選択。

「ブロック」の場合は、ユーザーが投稿した動画を見られなくするための措置を実施。「トラック」は、その動画の動向を追跡することが可能。

「マネタイズ」は、その動画に対して広告を行い、広告から得られた利益を、コンテンツパートナーとYouTube側で分け合うという仕組みになっている。

グーグル シニア プロダクト マネージャーの徳生裕人氏

コンテンツIDシステム拡充の方針を公表したグーグルの定例会見では、グーグル シニア プロダクト マネージャーで、YouTubeの日本・アジア太平洋地域担当の徳生裕人氏が説明。

徳生氏は、「マネタイズのオプションを加えることで、コンテンツパートナーにより多くの選択肢を提供できる」と強調。

その一例として、コンテンツパートナーの一つである角川グループが著作権を持っているアニメーションの例を紹介した。

同アニメでは、ユーザーが投稿した動画が、300万回の再生を記録。コメントも1,700万件あり、角川側ではこの動画を残し、かつ「マネタイズ」する方針を採用したという。

「マネタイズ」オプションを選択したアニメーション例

徳生氏は米国でマネタイズのオプションを採用するケースが増えていると説明した上で、「従来の50倍の再生回数と収益化を達成する例もある」と述べた。

米国では、単に広告を表示するのみならず、動画で流れるBGMに応じて、その曲の購入サイトへのリンクを表示したりするケースも増加。

徳生氏は、コンテンツIDシステムはさらに進化していると述べ、「リファレンス用のファイルの生成は15分以内で可能、本来のコンテンツの正式公開前にユーザーが投稿した動画との照合にも対応できるようなっている。また、過去にアップロードされた動画についても、照合できるようにした」と説明した。

また、動画のBGMに採用することができる楽曲を集めた「AudioSwap」についても説明。「ユーザーがより快適にYouTubeを使うことができるようにしたい」と述べた。

コンテンツIDシステムの今後の方向性については、「契約パートナーのさらなる拡大を図ると同時に、システムの性能も向上させ、パートナーの使い勝手を向上させていきたい」。さらに、「AudioSwapなど、ユーザーオプションの提供も充実させていきたい」と述べた。

その後の質疑応答では、「コンテンツIDシステムはパートナー以外でも活用できるのか?」という質問に対し、「パートナーでない場合は、ブロック機能のみ提供できる」と回答。

コンテンツホルダーが著作権を持つ本来の動画(左)と、ユーザーが投稿した動画の照合イメージ

「マッチング(照合)の精度は?」との質問には、「ほとんど100%の確率で照合できる」などと答えていた。