日立製作所および日立グローバルストレージテクノロジーズ(HGST)は2月23日、情報処理学会から、日立が開発・製造に携わった製品4点について、「情報処理技術遺産」の認定を受けたことを発表した。

同遺産は、日本のコンピュータ技術発達史上、重要なコンピュータ技術や製品など、次世代に継承していく上で重要な意義を持つ歴史的文物の保存と活用を図るため、情報処理学会が制定したもの。

今回認定を受けたものは、日立製作所エンタープライズサーバ事業部が所有する大型汎用コンピュータ「HITAC 5020」、HGST所有の磁気ディスク駆動装置「H-8564」、東京農工大学共生科学研究部先端情報科学部門が所有するミニコンピュータ「HITAC 10」、東日本旅客鉄道が所有する座席予約システム「MARS-1」の4点となっている。

HITAC 5020は、科学技術計算を主な目的として1964年に開発された国産初の大型汎用コンピュータ。素子にトランジスタを用いたコンピュータとしては、「HITAC 301」などに次ぐ第2世代機にあたる。1966年には、4ビットの直並列処理と先行技術によって性能を8~12倍向上させた「HITAC 5020 E/F」が開発されている。HITAC 5020は、最大コア容量262k語のハードウェアと、サポートするモニタ(現在のOSに相当)と呼ぶソフトウェアを融合させたもので、OSを用いたコンピュータの先駆けといえる。

また、H-8564は、日立が初めて自社開発した磁気ディスク駆動装置で、国内の他社に比べ約2年早い1967年6月よりカスタマへの納入を開始している。記録媒体は、磁性体を塗布した直径約360mm(14インチ)の円板6枚からなる交換可能なディスクパック構造を採用。最上部および最下部の円板は片方のみを使用することで、合計10本の磁気ヘッドを用いた。磁気ヘッドの方式は現在のものと変わらない方式で、面記録密度は0.11Mbit/inch2、装置当たり7.25MBの記録が可能であった。

日立初の磁気ディスク駆動装置「H-8564」(写真提供:日立製作所)

HITAC 10は、1969年2月に発表した国内初のミニコン。卓上型のコンピュータながら、最大記録容量32KBで、磁気ディスク、磁気ドラム、ラインプリンタはじめ各種インタフェース接続機構を有し、ソフトウェアはFORTRAN、BASIC、FALCULATOR、アセンブラを備えていた。

MARS(Magnetic-electronic Automatic Reservation System)-1は1959年11月に完成したシステムで、日本国有鉄道(国鉄)鉄道技術研究所(当時)が計画・設計し、国鉄の指導の下、日立が製作したシステム。現在、JRの「みどりの窓口」として活用されているJR座席予約システムの原型となったシステムであり、座席用に60万ビットの磁気ドラムを持ち、演算制御回路部を2組置き、照合させながら動作させる方式が採用されている。1960年2月より稼働を開始、東海道本線の「こだま」に適用されたほか、同6月からは「つばめ」の座席予約業務にも使用された。