三菱電機は、地上デジタル(地デジ)放送やBlu-Ray Disc(BD)を自動車内でも安定して鑑賞することが可能な車載用ハイビジョンAV用システム技術を2種類開発した。1つは、高速移動時の受信性能を高めた「歪補償技術」、もう1つは、電波障害の影響を抑えて安定した受信を実現する「電波干渉抑制技術」である。また、それに併せて、車載用1DINサイズのBDプレーヤのプロトタイプを開発したことも明らかにした。

地デジは、アナログ放送に比べクリアな映像が表示可能だが、移動速度が高速になるにつれ、電波が弱くなるほか、高速道路などでは、放送局から離れた場所に道路があることがあり、その場合は電波が弱くなってしまう。また、防音壁などがある場合も、それに遮られる形で電波が弱くなってしまう問題があった。

高速移動時などでは電波が弱くなり、画像が乱れやすくなる

三菱電機 先端技術総合研究所 映像技術部門 部門統轄の中山裕之氏

同社が新たに開発した「適応型歪補償技術」は、移動速度に応じて生じる信号のひずみを適応的に補償する、というもの。独自のアルゴリズムを用いることにより、安定して受信できる限界車速を従来の1.3~1.5倍程度に向上させることが可能となった。「環境により受信レベルが異なってしまうが、受信レベルが強い実験室レベルの環境であれば200km/h以上の走行速度でも安定受信可能。また、電波の弱い場所でも、これまで70km/h程度が限界であったのが、100km/h程度まで安定受信が可能になった」(同社 先端技術総合研究所 映像技術部門 部門統轄の中山裕之氏)という。

独自の歪補償技術により、限界車速を従来比最大1.5倍に拡大

また、電波干渉抑制技術についても、独自アルゴリズムを採用することで、反射した電波による受信信号の干渉成分を抑圧することに成功。これにより、電波障害地域での受信性能を向上させたほか、同一内容の放送を同一チャンネルで同時に送信するSFN(Single Frequency Network)環境での受信性能を向上させることに成功した。

電波障害の発生しやすい場所でも安定受信が可能に

一方、1DINサイズのBDプレーヤは、サイズ178mm×180mm×50mmを実現している。映像信号用処理基板の実装密度を従来のBDプレーヤ比で1.5倍とし、ディスクをローディングする搬送機構系を新たに開発したことで、デッキ部分の容積を従来の1/3に抑えることに成功した。

1DINサイズのBDプレーヤのプロトタイプを開発

三菱電機 先端技術総合研究所 ストレージ機器開発プロジェクトグループ プロジェクトマネジャーの三嶋英俊氏

また、ソフトウェアの構成を変更。車載用BDプレーヤ/の映像信号処理基板の上に、カスタマイズをした組み込みLinuxを搭載。その上に、「BDの再生制御」や「DVD再生制御」「仮想ファイルシステム」「著作権保護」などの各種機能をブロック化して搭載し、さらにその上にシステムアプリケーションを載せるというブロック構造を採用した。

さらに、BDの読み取り偏差がDVD比で1/4しか許容されないことから、「機構系と制御系を結合して高い精度で解析を実現するシミュレーションモデルを開発。これを基にデッキの構造を改良したことにより、ディスクの面振れが従来比で1/5に低減され、安定した再生を行うことを可能とした」(同社 先端技術総合研究所 ストレージ機器開発プロジェクトグループ プロジェクトマネジャーの三嶋英俊氏)という。

BDプレーヤの制振機構を改良することで車載用途でも対応可能とした

同社では、今回開発した移動受信性能向上技術などを盛り込んだ車載用復調LSIを併せて開発。これを搭載したチューナを2009年度内に製品化するべく開発を進めていくとしている。また、その後、BDプレーヤ機能を搭載した車載AVシステムを製品化、同社のカーマルチメディア事業に展開していく計画としている。