ケンタウルス座の方向、地球から1,400万光年という比較的近い距離にある電波銀河「ケンタウルスA(Centaurus A)」は、大小2つの銀河が衝突し、大が小を呑みこむように形成されたと言われている。衝突の際のショックが多くの恒星群を生み出すスターバースト現象を起こし、そして銀河の中央には超巨大質量をもつブラックホールが誕生した。光でさえ抜け出すことができない、ありとあらゆる物質を吸い込むブラックホール、その強大なパワーをまざまざと見せつけてくれるのが下の画像だ。

白く光り輝く銀河を、ダストレーン(暗黒星間ガス)が帯状に取り巻いているケンタウルスA(NGC 5128)。中央には太陽の数億倍の質量をもつブラックホールが存在すると推測されており、強力な電波を発している。オレンジの部分はチリに設置されている望遠鏡「APEX(Atacama Pathfinder Experiment)」がサブミリ波で捉えたもの、青い部分はX線観測衛星「チャンドラ(Chandra X-ray Observatory)」が捉えたもの

ブラックホールに吸収される物質は、降着円盤というガス状の固まりを形成するが、そこからX線やガンマ線がジェットとして大量に、猛スピードで放出される。この写真では、銀河の中心部のブラックホールから左上に向かって細長いジェットが伸び、その先にジェットローブ(ジェットの吹きだまり)ができているのがわかる。ジェットの長さには約1万3,000光年、噴き出す速度は光速の約半分だ。

ケンタウルスAは全天で5番目に明るい銀河ということもあって、アマチュア天文家にとっても人気の天体だ。ケンタウルス座は南天の星座なので、残念ながら日本ではなかなか観測しにくいが、ちょうど今頃の季節になるとケンタウルスAを含む上半身が地平線近くに姿を現す。銀河をバックにくっきりと浮かび上がる楕円状のダストレーン、チャンスがあったらぜひ探してみてほしい。