「文化祭と体育祭が一緒になったようなお祭り騒ぎ」――宮藤官九郎の率いるウーマンリブの最新公演『七人は僕の恋人』が、2008年11~12月、東京・下北沢の本多劇場、兵庫・兵庫県立芸術文化センターにて上演された。2005年に上演された第9回公演『七人の恋人』の女優版となる、オムニバスコント作品だ。女性キャストは伊勢志摩、宍戸美和公、猫背椿、平岩紙ら大人計画でおなじみの女優に加え、遠山景織子が初参加。また男性キャストには、荒川良々、星野源らの人気役者に加え、池田成志が、一度見たら忘れられないインパクトのある演技を見せる。まさに上記のクドカンの言葉通り、ハイテンションな笑いが炸裂しつづける傑作となった。
面白いのは、8つのコントそれぞれに、下敷きにした映画作品があることだ。2つ目のコントが終わると、舞台の背景に映像が流れ、初めてそのことが明らかになる。「生きる」、「バトルロワイヤル」、「遊星からの物体X」、「夢」、「サウンドオブミュージック」、「ブラックレイン」、「友だちの家はどこ?」、「ゾンビ」。もちろん、これらの作品を見ていなくても、コントは十分楽しめるものだが、見ているとさらにオリジナルとの「ギャップ」に面白みを感じられるだろう。
とにかく池田成志の熱気あふれる演技が素晴らしい。彼の活躍が、ただ笑えるだけのコントではなく、おかしさの中にも哀しみを垣間見させようとする宮藤演出の狙いに、説得力を与えている。特に冒頭の「生きる」では、スポットライトを浴びながら惜しみなく顔芸を披露してくれ、笑いとともに、人間が生命を誕生させることの不思議さ、切実さに思いを至らせてくれる。「ゾンビ」では、カツラを使った絶妙なタイミングで繰り広げられるダンスに、役者魂を感じさせる。カーテンコールの仕方にまで凝るのは、クドカン一流の演出術だろう。
また、伊勢志摩が輝いている。「夢」では、伊勢がパチンコのイメージキャラクターに選ばれ、CMの撮影に臨むのだが、どうしても「なぜ自分が選ばれたのか」納得することができない。CMの状況設定が『極道の妻たち』風の殺陣であったり(岩下志麻)、『キル・ビル』風の黄色いツナギを着させられたり(ユマ・サーマン)、似た名前の人物に間違えられている不安を拭い去れない。有名人になりたい、という変身願望を「夢」の中で叶えようとする伊勢志摩は、必然的にある結末へと至ってしまうことになる。
豪華なのは、全編にあふれる歌とダンスだ。バンド「SAKEROCK」で活躍する星野源は、ギターで弾き語りを披露。遠山景織子は、ジャージ姿で可憐にバレーボールに打ち込む。猫背椿は、保育園の先生となって、子どもたちと声を合わせて歌う。映画監督・荒川良々は、宣伝CMをアドリブで収録する。こうして、キャストの絶妙の掛け合いにより、精緻な、かつユルユルな、独特の笑いの世界が創りあげられる。「夢」のように時が過ぎていく2時間である。
WOWOWでは1月29日(25:00~)に『七人の恋人』を、30日(24:45~)に『七人は僕の恋人』を放送する。
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