土星は、現在わかっているだけでも60もの衛星を抱えている"子だくさん"の惑星である。輪の内側にあったり、外側にあったり、はたまた輪の間隙に潜り込んでいたり。まだ見つかっていない衛星も存在すると言われている。

そんな多くの兄弟姉妹たちの中の第12番目、大きさなら4番目の衛星がこの写真の「ディオネ(Dione)」である。「土星IV号」と呼ばれることもあるが、それではちょっと味気ないので、やはり「ディオネ」で。

イタリアの大天文学者ジョバンニ・カッシーニが1684年に発見したディオネは、ギリシャ神話に登場するタイタン族(巨神族)の女神にちなんで名付けられた。表面は水の氷で覆われており、大気はない。火星や月のクレーターに比べ、凹凸が少ないのが特徴

もちろん太陽から遠い彼方にある衛星がこんな鮮やかな色をしているわけではない。紫外線、赤外線、そして緑色光の3種類のフィルターを使って得られた3枚の画像を合成、それを地形の特徴をはっきり投影している白黒写真にマッピングし、さらにクリアフィルターを通すことで得られたものである。

紫外線、赤外線、可視光線によって生じたこの色の違いは何を示しているのか、今の段階ではわかっていない。表面を覆う氷の粒子のサイズに違いがあるのでは、とも言われているが、確かな証拠はない。

ディオネはこの写真のように、前半球と呼ばれる部分が明るく輝いている。いくつも見える断層やクレーターは過去に活発な地殻運動があった証とされているが、後半球にはこれらの跡はほとんど見られない。つめたい氷の表面の下に、どんな歴史を抱えているのだろうか。