なんとか3カ月もってくれれば… -- それがこの"双子"に寄せた関係者たちの願いだった。あれから5年、今日まで双子がそろって活躍してくれるとは、いったい何人が予想しただろうか。1月3日(米国時間)、2003年にNASAが打ち上げた2台の火星探査機「スピリット(Spirit)」と「オポチュニティ(Opportunity)」のうち、スピリットが火星に着地してからちょうど5年が経過した。このまま順調にいけば、オポチュニティも1月21日に5周年を迎えることができそうだ。

火星での生活も5年が過ぎようとしている"Mars Exploration Rover(MER)"。スピリットは「MER-1」、オポチュニティは「MER-2」とも呼ばれている。重量約180kg、6つのホイール、太陽光パネル、ロボットアームに4台の分光計を備えている。某映画の主人公にそっくり!?

アメリカ航空宇宙局(以下、NASA)は、2003年6月10日にスピリットを、7月7日にオポチュニティを火星に向けて打ち上げた。地球からの距離およそ7,800万km、半年間の飛行を経て、スピリットは2004年1月3日に、オポチュニティは1月21日に、それぞれ無事に火星に着地する。当初は両機とも「90日間のミッション」の遂行のみを期待されていた。ミッション中、最も大きな目的は、過去、地表に水(液体)が存在したかどうかの調査だったが、両機ともそれぞれの調査地点(スピリット: グゼフ・クレーター、オポチュニティ: メリディアニ平原)において、大量の水がかつて地表を覆っていた証拠を2004年に発見している。5年に渡る探査期間中、ミッションは更新され続け、走行距離は21km、送信されてきた画像数は25万枚、データ量は36Gバイトに上る。なお、両機のオペレーションは、米カリフォルニア州パサデナにあるNASAのジェット推進研究所(JPL)で行われている。

厳寒、砂嵐、岩だらけの地表、オペレーションミスや機材破損のおそれなど、過酷な状況下にもかかわらず、両機が予想をはるかに超える活動期間と科学的成果を記録したこことについて、JPLでプロジェクトマネージャを務めるJohn Callas氏は「(スピリット、オポチュニティともに)信じられないほど、トラブルや過酷な環境に対する回復力が強い」と語り、「5年間でこなしたミッションを、さらに超えて活動することもあり得る」と、"双子の探査機"のさらなる可能性を示唆している。また、コーネル大学教授で、NASAで両機の主任調査官(PI)を務めるSteve Squyres氏は、「数十年後に火星探査の歴史を振り返ったとき、2台のローバー(探査機)の活躍は、彼らが成し遂げた業績だけでなく、人類が初めて真の意味で火星の地表を探査した記録として残るかもしれない」とコメントしている。

スピリットから送られてきた1月5日付けの「ボネステル・クレーター」の画像。SFの世界に大きな影響を与えた画家・Chesley Bonestell氏にちなんで名付けられた