韓国最大手の通信会社であるKTは、WiBro(韓国版のMobile WiMAXサービス)のビジネスモデルを発掘し、活性化させるため、他社との提携を行った。同社は6企業と提携し「KT WiBro Biz Alliance」(以下、WiBro Alliance)を設立させた。

WiBro Allianceへ加入したのは、WiBro装備メーカーのPOSDATA、美容機器をはじめとした機械メーカーのARAM HUVIS、金融ソリューション開発を行うFREE WIDE、マルチメディアソリューション開発のTGOL、タクシーのシートに埋め込まれた画面で放映されるチャンネルを運用するタクシーTV、自社開発の端末で、設問調査の素早い実施を行うサービスを提供するDAMO R&C、POSシステムの構築を行うHUBROの7社だ。

これらの企業と、WiBroに関連する新しいビジネスモデルを開発していくわけだが、現在のところ"第1段階"として計画されている企画もいくつかある。

それはWiBroによって肌を管理する「W-Skin」、WiBroによる決済「W-Check Line」、WiBroによる情報案内システム「W-Kiosk」、WiBroタクシー、バスPC房(PC房は、韓国語でインターネットカフェを意味)などだ。

W-Skinは、化粧品の販売員向けに提供されるシステムだ。小型端末を顧客の肌にあてて肌の乾燥状態などを測定し、コンサルティングに役立てるというものだ。ここで収集されたデータは保存され、商品開発や顧客管理に役立てられる。

W-Check Lineでは、WiBroネットワークを通じて、屋外にいても決済ができるようにするもの、W-Kioskは移動中でも道案内などができるようにするシステムだ。

またWiBroタクシー、バスPC房は、車両内にWiBro対応端末を設置し、移動中でもインターネットができるようにするシステムだ。ここでは広告映像も流される。このシステムは現在、ソウルと仁川間を走るバス100台に試験的に設置されており、今後この数を増やしていく予定だ。

この他にも、多くのビジネスモデルの開発を目指す同社では「Biz Alliance Center」も運営し、複数の企業間の連絡を密にしながら、新しいビジネスモデルの迅速な商用化を進めていく。さらに多様なニーズに応える料金制を開発したり、流通チャネルの支援も行うなどして、提携企業との協力を推し進めていくとしている。

一方でKTでは、M2M(Machine-to-Machine)を基盤としたビジネスが拡大すると予測。これは、例を挙げるとガスや電気料金の遠隔検針、あるいはバスや地下鉄内で放映される公告映像などのことで、これらを実施する際にWiBroを活用させたいと考えているようだ。このような目標を立てるのは、この分野が今後活性化する見込みがあるためだ。

市場調査会社のABIリサーチによると、M2M基盤のグローバルなビジネス市場は、2012年まで31%以上の成長を見せるという。WiBroが上記のような分野で活用されるようになれば、日常生活の見えない部分に至るまでWiBroが根付くこととなり、KTでもそうしたビジネスモデルの確立を狙っているということである。

KTがこのように、WiBro事業に注力してきているのは、韓国におけるもう1つのWiBroサービス事業者であるSK Telecom(以下、SKT)が、WiBroサービスに本腰を入れてきているためでもある。SKTではWiBroの次世代規格で高速なWAVE 2の試演を成功させた後、対応エリアをソウル全域および首都圏地域に拡大させているほか、多様かつお得なプロモーション料金を発表するなどして、加入者をじわじわと増やしているのだ。

KTでは、ライバルによるこうした攻撃態勢に備えつつ、WiBro市場全体の活性化を図りたいと考えているようだ。じつは韓国におけるWiBroの市場は20万人以下と、まだそれほど多くない。加入者増加の面でも苦戦しているが、上記のようなサービスの実現によって市場が活性化していってほしいものだ。

KT WiBro Biz Allianceに参加している企業の代表。左から、POSDATA取締役のナ・ドンジュ氏、ARAM HUVIS社長のパクドンスン氏、FREE WIDE社長のイ・テソン氏、HUBRO社長のパク・テウォン氏、KT WiBro本部長のピョ・ヒョンミョン氏、TGOL社長のチョ・ジュンヒ氏、タクシーTVのイ・ヨンヒョン氏、DAMO R&C社長のパク・ジョンウン氏、KT常務のチョン・グワンヨン氏