インターネットで医薬品を販売する事業者40社で構成する「日本オンラインドラッグ協会」は20日、厚生労働省の「薬事法施行規則等の一部を改正する省令案」に関し、ネットでの安全な医薬品販売を可能にするための「自主ガイドライン」を発表した。省令案はネット医薬品販売を規制する内容で、同協会は省令案の見直しを求めている。

ネットでの第1類と第2類の医薬品販売を省令案で禁止

2006年6月に公布され、2009年春にも施行が予定されている改正薬事法では、リスクに応じて医薬品を「第1類」「第2類」「第3類」の3種類に分類。今年7月には、厚生労働省の検討委員会が、各分類の医薬品販売方法の在り方について報告書の中で言及。

同報告書によれば、第1類は「情報通信技術を活用した販売は適当でない」、第2類は「対面の原則が担保されない限り、販売することを認められない」とし、この2分類の医薬品のネット販売について否定的な見解を提示。

同報告書を受け9月17日に公表された省令案では、第1類と第2類の医薬品については、医薬品に関する情報を直接提供できる対面販売を原則化。これができないネットショップなどについては「第3類医薬品以外の医薬品を販売し、又は授与しないこと」と明記した。

厚生労働省の考えを確認し「新・ガイドライン」を発表

日本オンラインドラッグ協会はこれに対し、「現在はインターネットで購入できる、解熱鎮痛剤や風邪薬、胃腸薬、水虫薬などの販売もできなくなる」と反発。

同協会では、省令案公表の前となる今年8月にも「安全・安心な医薬品インターネット販売を実現する自主ガイドライン」を策定・公表したが、今回、省令案の公表に伴う厚生労働省の考え方を確認した上で、新たな自主ガイドラインを発表することにした。

日本オンラインドラッグ協会理事長の後藤玄利氏

20日開かれた新ガイドライン記者発表会で、同協会理事長の後藤玄利氏はまず、「現在の薬事法では第1類、第2類、第3類、全ての一般医薬品のネット販売が認められている」と主張。その根拠として、1988年3月の「カタログ販売に関する通達」や、薬事法第37条を挙げた。

さらに、改正薬事法でも現在の薬事法第37条が変更されていないことを根拠に、「改正薬事法でもインターネットによる大衆薬販売は適法とされている」とし、「厚生労働省は薬事法で適法とされているものを、省令で規制しようとしている」と話した。

ネット販売での情報提供や相談の方法について「フローを確立」

また、改正薬事法第36条の6で定めている、第1類の医薬品販売において必要な薬剤師による書面での情報提供について、「この要件を満たすインターネットでの医薬品販売は十分に可能」とし、これを実現するための新・自主ガイドラインについて説明した。

新ガイドラインでは、8月に公表したガイドラインにあった「対面の原則を担保する」という文言について、「厚生労働省は対面の原則を形式的な意味でしかとらえていない」として削除。その代わりに、インターネットや電話、ファクスなどによる情報提供や相談の方法について「フローを確立した」(後藤氏)内容となっている。

具体的には、第1類の医薬品購入の場合、インターネットなどを通じて薬剤師が医薬品の適正使用に関する情報を提供し、問診や相談などもサイト上で行った上で、ユーザーが医薬品を購入。医薬品を届ける際にも、医薬品に関する説明文書を同梱し、購入者がそれを確認するといった方法を提示している。

後藤氏は「インターネットによる販売でも、薬剤師による購入前のチェックなどは可能」と話した

第2類、第3類に関しては、「商品発送の際必ずしも説明文書を同梱しなければいけないわけではない」としつつ、他のフローは同様のものを想定している。

後藤氏は、「インターネットでの医薬品販売は、自主ガイドラインによって、ドラッグストアなど店頭での販売を上回る安全・安心を確保できる」とし、「第1類、第2類のネット販売を規制する省令案の見直しを求めていきたい」と述べた。

個人輸入や未承認薬の問題と議論が混同

後藤氏の発表後行われた質疑応答では、多くの記者が質問し、この問題に関する関心の高さをうかがわせた。

「薬害被害者団体などが『医薬品のインターネット販売は危険ではないか』としている点について、どう思うか」との質問に対し、後藤氏は、「インターネット販売の安全・安心な枠組みを作るため自主ガイドラインを作ったわけであり、目指すべきゴールは同じだと感じている」と回答。

また、「医薬品のネット販売に関するトラブルが多く発生していると聞くが」との質問には、「海外からの個人輸入や未承認薬の販売と混同されている面があるのではないか。我々はあくまで、一般医薬品しか扱っていない」と回答した。

さらに、「今回の薬事法改正では、ネット販売は新制度から外されおり、新しい法整備が必要なのではないか」との質問に対しては、「厚生労働省の審議会での議論から我々当事者が完全に外されていたのは不思議でならない。新しい法整備のためにも、今回の自主ガイドラインは役立つのではないか」と述べた。

日本オンラインドラッグ協会では、省令案を見直すべきとする意見書を、規制改革会議などを所管する甘利明内閣府特命担当大臣に20日、舛添要一厚生労働大臣に21日、提出するとしている。