IT企業において、社員の能力開発や必要スキル明示に業績向上が関係する実態が、NTTデータ経営研究所調査で明らかになった。この調査は、gooリサーチ登録モニターのうち、通信・IT関連サービス企業の勤務者を対象にした「IT人材のプロフェッショナル意識調査2008」で、有効回答数は1,199人。

IT企業に勤務している人の転職検討状況を見ると、「転職を考えており、志望企業や人材仲介会社と接触している、または予定がある」が5.9%、「転職を考えており、転職に向けた情報収集を始めている」が13.5%、「転職を考えているが、具体的な行動は起こしていない」が25.4%であり、全体の44.8%の人が転職を考えている。実際に具体的な行動や情報収集をしている回答者は19.4%に上る。

転職意向(出典:NTTデータ経営研究所)

転職を考えている人が希望する業種の1位と2位は同じIT業界だが、3位に「ITとは直接関係の無い異業種」(30.0%)が入った。

転職希望者が希望する転職先の業種(出典:NTTデータ経営研究所)

転職を考えている人に現在の勤務先の特徴(制度や風土)を尋ねたところ、「人事評価ではフィードバックに時間をかけていない」が36.1ポイントで最多だった。以下、「失敗を恐れずチャレンジする社員が多くない」(30.2ポイント)、「人事評価は結果だけでなく意欲や工夫も含めて、適正に行われていない」(30.0ポイント)が続く。NTTデータ経営研は、上位の項目は社員が離れる会社の特徴と見ている。

転職希望者が挙げる勤務先の特徴(出典:NTTデータ経営研究所)

順位 項目 種別 DI値※
1位 人事評価では、フィードバックに時間をかけていない 人事制 36.1ポイント
2位 失敗を恐れず、チャレンジする社員が多くない 職場 30.2ポイント
3位 人事評価は結果だけでなく意欲や工夫も含めて、適正に行われていない 人事制度 30.0ポイント
4位 仕事量は社員にとって適正な水準でない 仕事 27.0ポイント
5位 研修プログラムの内容や頻度が充実していない 人材開発 25.3ポイント

※DI値は「当てはまらない」と回答した割合(%)から、「当てはまる」と回答した割合(%)を差し引いた値

自分の能力を最大限発揮できているかどうかについては、「ほとんど発揮できていない」が6.8%、「あまり発揮できていない」が29.0%で、計35.8%が自分の能力を発揮できていないと感じている。

今の職場や仕事で将来的にさらなる能力を発揮できるか尋ねると、「今の職場・仕事では難しいが、会社内にはさらなる能力を発揮できる職場・仕事があると思う」と部署移動で解決できると考えている人は38.7%、一方「今の職場・仕事でも会社内でも、さらなる能力発揮は難しいと思う」と、転職しなければ解決できないと思う人は23.9%であった。

現在の職場・仕事で将来的にさらなる能力を発揮できるか否か(出典:NTTデータ経営研究所)

勤務先が社員の能力活用に努めているか否かを問うと、「あまり努めていないように感じる」が32.8%、「ほとんど努めていないように感じる」が13.7%であり、否定的な見方が計46.5%に上った。

勤務先による社員の能力活用への取組状況(出典:NTTデータ経営研究所)

勤務先の過去2-3年の業績推移を尋ねたところ、勤務先が社員の能力活用に務めていないとする回答者の場合は「業績が急激に悪化している」が6.5%、「業績がやや悪化している」が28.0%、「ほぼ同水準である」が36.5%であり、業績が向上していない企業が計71.0%に上る。

社員の能力開発と過去2-3年の業績推移との相関関係(出典:NTTデータ経営研究所)

勤務先が社員の能力活用に努めているという回答者に勤務先に当てはまる特徴を尋ねたところ、「上司は社員の意見を聞き、尊重することが多い」「上司は部下から信頼されている」「業績達成に向けて、社員に結果の説明が定期的に求められる」が上位に並ぶ。NTTデータ経営研は、これらは社員を活かす会社の特徴と見ている。

社員の能力開発に務めていると感じる勤務先に当てはまる特徴(出典:NTTデータ経営研究所)

順位 項目 種別 DI値※
1位 上司は社員の意見を聞き、尊重することが多い 職場 50.2ポイント
2位 上司は部下から信頼されている 職場 49.4ポイント
3位 業績達成に向けて、社員に結果の説明が定期的に求められる 経営 48.0ポイント
4位 経営戦略・経営方針は、社員と共有されている 経営 42.1ポイント
5位 経営者は社員から信頼されている 経営 38.8ポイント

※DI値は「当てはまらない」と回答した割合(%)から、「当てはまる」と回答した割合(%)を差し引いた値

自身の保有スキルを高めていく必要性を尋ねると、「強く感じている」が41.4%、「ある程度、感じている」が51.7%であり、必要性を感じている回答者は全体の93.1%に上る。

自身のスキル高度化に対する意識(出典:NTTデータ経営研究所)