Jerry Yang氏

米Yahoo!は11月17日(現地時間)、同社共同創業者でCEOのJerry Yang氏の辞任を発表した。同社は現在新CEOを選出している段階であり、後任が決まり次第交替を行う。以後、Yang氏は2007年6月のCEO就任以前のChief Yahoo!の職へと戻り、CEO辞任後も引き続き同社ボードメンバーとして在籍する。

後任CEOの選出は同社会長のRoy Bostock氏を中心に、Yang氏ならびに外部役員との協議のうえで進めることになる。CEO候補は内部からの選出と外部からの招致の両方の可能性を模索しており、国際的な幹部ヘッドハンティングで名高いHeidrick & Strugglesに協力を仰いでいる。Bostock氏は「過去1年半、並々ならぬ困難と混乱の中、Jerry YangはオープンプラットフォームモデルにおけるYahoo!の戦略転換を率い、コストと売上の両面で改善に尽くした。そしてわれわれはいま、Yahoo!を次のレベルへと引き上げることが可能な新CEOへの引き継ぎに最適なタイミングだという意見で一致した」とコメントし、Yang氏の功績を称えている。

このようにYahoo!側ではYang氏のCEO辞任を勇退だと強調しているものの、実際にはMicrosoft買収撤回後の株価急落、そしてGoogleと進めていた提携が破談したことで、株主らを中心とした外部からのプレッシャーに耐えられなくなったことが原因とみられる。MicrosoftがYahoo!買収を打診していた2008年前半、Yahoo!株価は30ドルに近い水準で推移していたものの買収撤回後は20ドル前後まで急落、さらに昨今の金融危機で株価はさらに下落を続け、ついに11月13日の取引時間中には10ドルを下回る水準まで落ち込んでしまった。Microsoftの1株あたり31ドルの買収提案の時期と比較して、現在の株価は3分の1未満の水準だ。Yang氏を中心とした経営チームは株価下落分をカバーするだけの戦略を打ち出す必要性に迫られていたが、その起死回生策のひとつがGoogleとの提携だった。だが提携はMicrosoftや広告主団体らの猛烈な反対を受け、米司法省による独占禁止法違反の審査が進むと、見通しが困難と判断したGoogleは提携を打ち切ってしまう。これが歯止めとなり、Yahoo!浮上の可能性が閉ざされてしまった。Yang氏はMicrosoft買収に反対していた強行派として知られており、今回の辞任はその責任をとったと考えるのが自然だろう。

だがYang氏CEO辞任後のYahoo!の見通しは依然として不透明だ。Microsoftによる買収の直接の障壁はなくなったものの、Yang氏は依然として同社に影響力を持っているとみられ、買収が一筋縄で成立するとは考えにくい。Microsoft自身も買収を表明していた時期と比べて時価総額が3分の2近くまで落ち込んでおり、今後の金融危機の影響を考えると多大なキャッシュを動かす買収のハードルは以前より高くなっている。Googleも前述の理由で再びYahoo!との連携にすぐに動き出す可能性は低く、しばらくは膠着状態が続くことになるのではないだろうか。