米Tektronixの日本法人である日本テクトロニクスは10月27日、ベクトル・シグナル解析ソフトウェア「SignalVu」を発売した。

同ソフトは、同社のデジタルオシロスコープ「DPO7000シリーズ」「DPO/DSA70000シリーズ」専用のソフトウェア。これまでワイドバンドの解析には、スペクトラム・アナライザ(スペアナ)を用いていたが、一度オシロスコープで信号を取り込んだ後、スペアナにまわす必要があり、後処理などに時間を必要としていた。同ソフトを使用することで、オシロスコープをベクトル・アナライザとして使用することができるようになり、RFのテストの実行速度を向上させることが可能だ。

「SignalVu」の特長

外付けのダウンコンバータを用いずに最大20GHzまでの周波数帯域を、サンプルレート50GSps、レコード長500Mポイントで検証可能であり、かつ同社のオシロスコープが持つトリガシステム「Pinpoint」を1つのパッケージとして統合している。また、取込長は、設定する取り込み帯域で異なるが、DPO7000シリーズでは最高サンプルレート時、1チャネルで最長12.5ms、DPO/DSA70000シリーズでは、最高サンプルレート時、1チャネルで最長5msとなる。

直感的なインタフェースを採用しており、水平軸、トリガ、垂直軸設定などの取り込み設定は、前面パネルの入力部で設定することが可能である。

オシロスコープの性能をそのまま生かすことが可能

また、信号解析エンジンは同社のリアルタイム・スペクトラム・アナライザ「RSA6100Aシリーズ」と同じものを使用。4チャネルまで同時に取り込みが可能で、データの再取り込みなしで、表示方法と表示モードの変更、スペクトラムのFFTオーバーラップ(時間分解能の変更)、分解能帯域幅(RBW)の設定変更などが可能だ。

例えば、周波数ホッピングの解析の場合、時間、周波数、振幅の詳細な変化を観測可能なほか、時間とともに変化するスペクトラムなどを、一度に表示することが可能である。また、ワイドバンド・レーダ信号の解析の場合、パルスの測定に対し、21種類の自動測定を行うことが可能であるなど、さまざまな解析が可能となっている。

周波数ホッピングの解析画面(周波数と時間の測定が左上で行われているほか、右下の画面では時間とともに変化するスペクトラムを理解することが可能となっている)

ワイドバンドレーダ信号の解析画面(右上ではパルストレンドのデータ/統計の解析が行われているほか、左下では時間相関のとれたワイドパルス解析が行われている)

TektronixのRFテクニカル・マーケティング・マネージャーであるDarren McCarthy氏

こうした機能を取り揃えており、TektronixのRFテクニカル・マーケティング・マネージャーであるDarren McCarthy氏は、「これまで面倒な操作が必要だったワイドバンドの測定に対し、最良の選択肢が提供されることとなった」とする。

なお、製品としてはベースとなるベクトル・信号解析ソフトウェア「SignalVu Essential」がDPO7000用(最大帯域500MHz~3.5GHz)が45万4,000円(税別)、DPO/DSA70000用の最大帯域4~8GHz品が64万8,000円(税別)、同12.5~20GHz品が90万8,000円(税別)となっている。また、アプリケーションサポートとして、パルス解析機能拡張モジュール(ワイドバンド・レーダ解析用)が83万5,000円(税別)、デジタル変調解析機能拡張モジュール(ワイドバンド通信解析用)が70万8,000円(税別)となっている。

同社では、「今までは時間領域の対応だけであったが、同ソフトにより周波数領域でも調べることが可能となった」(同)とし、「日本はワイヤレスアプリケーションの案件が多く、新しいアプリケーションの登場も期待できる市場」(同)と日本市場での普及促進を狙っていくとしている。