米連邦捜査局(FBI)は10月16日(現地時間)、2年間に及ぶ"おとり捜査"の末、ネット犯罪などに関わる56人の容疑者を逮捕したと発表した。この逮捕で未然に防がれた社会的損失の規模はおよそ7,000万ドルに上る見込みだという。これは、クレジットカード番号などの個人情報などを交換する場として運営されていた「DarkMarket」というサイトを通じて得た情報を基にしたもの。同サイトの運営者は今年9月、自身がFBIのエージェントであることを明かしてサイトを閉鎖していた。

DarkMarketは過去数年間にわたって運営されていたアングラサイトのひとつで、クレジットカード番号やID/パスワード、あるいは関連情報や違法品の取引など、犯罪者が情報交換を行う場として機能していた。だが9月12日に「Chao」の名称で知られるトルコ人のハッカーのCagatay Evyapanが検挙されたことで、一部で噂に上っていた「DarkMarketは警察組織によって運営されている」という話が事実として浮上してきた。ChaoはATMに細工を加えることで利用者のカード情報やPINコードを盗み出す、いわゆるスキミング犯罪の大物として知られていた。オンラインサイトのWiredは翌13日、ドイツのラジオ情報局Sudwestrundfunkの情報として、DarkMarketの運営を行っているのは米ペンシルバニア州ピッツバーグに拠点を構えるNCFTA(National Cyber Forensics Training Alliance)のエージェントだと報じている。NCFTAはサイバー犯罪を専門にするFBIの関連団体のひとつだ。

そしてChao逮捕の翌週にあたる17日、DarkMarketの運営者であるMaster Splyntrは同サイト上に長年の活動は成功裏に終了したことを記し、同サイトがFBIの運営であったことを明らかにした。現在では、SplyntrはFBIシニアエージェントのJ. Keith Mularski氏であることが判明している。FBIによれば、DarkMarketの登録者はピーク時で2,500名にも上っていたという。こうしたメンバーが犯罪にまつわる情報の売買を行っていたというのだ。FBIサイバー部門アシスタントディレクターのShawn Henry氏は「技術が急拡大する今日の世界では、これら犯罪への対抗のため、取り締まりにも柔軟で創造的な手法が要求される」とその意図を説明する。また捜査の実施にあたっては世界各地の関連組織との連携が行われたとも述べている。