松下電器産業(パナソニック)は、103インチプラズマテレビと、ブルーレイディスクプレーヤーによる3D(立体)映像視聴を可能にする「3DフルHD プラズマ・シアターシステム」を開発したと発表した。

パナソニックが今回開発したシステム

従来の民生用の3D映像システムは、走査線ごとに右目、左目に振り分けて表示する「ライン・バイ・ライン方式」であることから垂直解像度が低下したり、左右2画面分のフルHD映像を一画面分のデータ領域で、千鳥配置にサンプリングして蓄積、伝送する「チェッカーサンプリング方式」であったため、間引きによる映像品質の劣化などの問題が生じていた。

今回、開発した技術は、フレームシーケンシャル方式を採用し、左右交互に、左右の片眼あたりの情報を60iで伝送し、60pで倍速表示。1920×1080画素での臨場感ある3D映像の表示を可能としたのが特徴。フルHDを表示する3Dシステムは、民生用としては世界初となる。

従来の3D方式との比較

パナソニックAVCネットワークス社 技術統括センター 高画質高音質開発センターの宮井宏所長

「シアターの臨場感と高品位を、いかに家庭で再現できるかを目指した。フルHD×2チャンネル方式の3D対応BDディスク、対応BDプレーヤー、そして動画応答性に優れるプラズマパネルとの組み合わせによって、情報を劣化させずに3D映像を再現。従来の3D表示がハーフHDとすれば、この技術ではフルHDが実現できる」(パナソニックAVCネットワークス社技術統括センター高画質高音質開発センターの宮井宏所長)とする。

システムの構成と特徴

パナソニックAVCネットワークス社 技術統括センター 高画質高音質開発センター 画質担当参事の末次圭介氏

また、「3Dになったからといって、現在の2Dに比べて画質が劣るので意味がない。進化という点では、2Dと同じ画質を実現しながら、3Dを実現するのが基本的な考え方」(パナソニックAVCネットワークス社技術統括センター高画質高音質開発センター画質担当参事の末次圭介氏)として、高画質での映像再現が、今回の技術の狙いであることを強調する。

3D表示対応のブルーレイディスクには、同社の光ディスク技術や圧縮技術のほか、パナソニックがハリウッドに開設している「Panasonic Hollywood Laboratory(PHL)」で培ったオーサリング技術を活用することで、現行のブルーレイディスク1枚に、左右それぞれに2チャンネルのフルHD映像を収録。「将来的には、圧縮技術の進化によって、2Dの映像と3Dの映像の双方を1枚のディスクに収録して流通させることも考えたい」(末次氏)という。

また、ブルーレイディスクプレーヤーには、同社独自のユニフィエプラットフォームのノウハウを活かし、ディスクに収録されたフルHDによる3D映像データをリアルタイムでデコードおよび再生する技術を開発。プラズマテレビの上部3箇所に設置された赤外線センサーによって、液晶シャッター機能付きの3Dメガネを同期させ、3D画像を視聴できるようにしている。

実際の画像はこのように二重になっている

液晶シャッターを搭載した市販の3D用メガネで視聴する

プラズマテレビ上部に3カ所置かれた赤外線センサーで、3Dメガネと信号をやりとりする

同技術を採用した製品の投入時期は、現時点では未定としており、「パナソニックの独自の技術というのではなく、業界全体の標準的な規格として普及させていきたい。ハリウッドの映画会社や、Blu-ray Disc Association(BDA)加盟の民生機器メーカーなどと協議を進め、BDAにおいて、3D表示フォーマットの規格化を図り、家庭における3Dシステムの普及につなげたい」(宮井所長)とする。

製品化の際には、現行商品に外付けで3D機能を実現するハードを搭載したり、ソフトによるバージョンアップが不可能なことから、3D対応とした製品を新規に購入する必要が出てくることになりそうだ。

「コストの上昇という観点では、機能性から見れば十分吸収できる範囲もの。また、技術的な課題といった面も少なく、3Dコンテンツも揃いはじめている。普及に向けては、いかに早い段階でBD規格のひとつとして承認され、ファミリーを増やしていくことができるかどうかにかかっている」という。

ハリウッドでは、2003年にスピルバーグ監督などが、3Dに対応した映画製作に乗り出すことを宣言したことをきっかけに、3Dコンテンツの制作に対する積極的な取り組みが行われており、ディズニーはすべてのアニメーションを3D化することを発表している。

また、北米では3万6000スクリーンのうち、1200スクリーンでの3D映画の上映が可能となっており、3D版の映画上映は、同じ映画の2D版に比べて、3倍の売り上げになっているという。これまでは、IMAX-3Dを中心とした展開だったものが、メジャースタジオが旧タイトルの3Dリメイク版を含めてコンテンツを増加させることを発表しており、この動きが2009年以降、さらに加速すると見られている。

デモストレーションに使用した103インチプラズマテレビ

試作品では、パナソニック製プレーヤーを使用。BD-REにコンテンツを収録していた

さらに、3D映像を収録したDVDパッケージがすでに発売されているほか、ディズニーが3D方式のBDパッケージを発売するといった動きも見られている。

なお、パナソニックでは、同技術を、9月30日から千葉県・幕張の幕張メッセで開催されるCEATEC JAPANの同ブースで展示する予定。20人を収容できるシアターを設置し、約10分間の3D映像を視聴することが可能だ。