韓国で、消防車や救急車を呼ぶための119番の通信網を傍聴していた人物が、このたび摘発された。

韓国政府の放送通信委員会の所属機関である、中央電波監理所。さらにその所属機関である釜山電波監理所は、警察庁との共同捜査を通じ、119番の消防通信網を不法盗聴していた被疑者5人を摘発したと発表した。

今回の事件には、韓国の救急車に関する制度が大きくかかわっている。韓国の救急車は、国で運営にあたっている救急車や、各救急病院で個別に運用するものなどのほかに、民間業者が、自社の救急車で患者を移送する救急車もある。政府や救急病院だけでは賄いきれない、多くの患者を運ぶためには、彼らの力も必要というわけだ。

韓国政府の保健福祉部の「2007年度 保険福祉統計年報」によると、2006年時点で民間の救急移送業者の数は全国に660カ所あった。これは2005年より5台減少した数値であるものの、移送業者は2004年から継続して600台以上を維持してきている。個別の都市で見ると、ソウルのような大都市では170カ所が稼働している。今回事件のあった釜山では57カ所と、ソウルの半分以下ではあるが、中央電波監理所によると、ここ最近はこの移送業者たちの間で「激しい競争が行われていた」という。

今回の事件の被疑者は、釜山市のアパートに盗聴用無線機を設置。119番の消防通信網を不法盗聴し、事故が発生すればすぐに待機している車両に出動要請をかけていた。業界内の競争の厳しさから、他社よりもいち早く事故を知り出動させるということが、盗聴の目的だったと考えられている。

同事件の調査は、8月中旬に盗聴の事実があるという情報を、釜山電波監理所が入手したことで開始された。その後警察の調査により、5人の容疑者が検挙されるとともに、盗聴に使われていた無線機10台が押収された。

今回の事件で、盗聴に利用されていた無線機

通信秘密保護法では、通信の盗聴行為や、他人間の会話を録音したり聴取する行為は不法とされているため、5人の被疑者は今後、これに従って処罰をうけることとなる。ちなみに法の規定では「10年以下の懲役、もしくは5年以下の資格停止」というように規定されている。

民間の移送業者は、人命を救助するには不安と言わざるを得ない。これまでにも、人員や設備不足をはじめとした、さまざまな問題が指摘されてきた。今回は過当競争が引き金となった盗聴事件ということで、患者当事者だけでなく、それ以外の人も被害をこうむりえるという点に問題がある。中央電波監理所では今後、盗聴の取り締まりを強化すると述べている。