日本IBMは9月9日、情報管理の基盤となる新戦略「Information Infrastructure」に基づくストレージ・ソリューションを強化する新製品として「IBM XIVストレージ・システム モデルA14」と「IBM System Storage ProtecTIER Enterprise Edition V2.1」を発表した。

IBMシステムズ&テクノロジー・グループ システム・ストレージ ストラテジー担当副社長 バリー・ルドルフ氏

「Information Infrastructure」は日本、アメリカ、フランスで同時発表された新戦略だ。2月に同社が発表した、データセンター革新のための「New Enterprise Data Center(NEDC)」を実現するコンポーネントのひとつに位置づけられている。データセンター再構築にあたって重要となる情報の可用性、統合、長期保管、セキュリティなどにフォーカスしており、30を越える新製品や既存製品の強化を行っている。

IBMシステムズ&テクノロジー・グループ システム・ストレージ ストラテジー担当副社長であるバリー・ルドルフ氏は「爆発的に情報量が増加している。2010年までに年57%の成長率があり、80%は非構造化データであるというレポートがある。また、情報の共有や情報の活用、リスク管理などのニーズがある」と情報ソリューションには多くの関連要素があることを指摘し、そうした状況に対応し、ニーズに応えることができるのが「Information Infrastructure」だと語った。

システム製品事業 プラットフォーム ストレージ事業部長 吉松正三氏

日本IBMとしての取り組みを発表したシステム製品事業 プラットフォーム ストレージ事業部長である吉松正三氏も、情報量の急激な増加については実体験を交えて繰り返し強調した。 「妻がブログを書いているが、最初は数MBだった容量が1年たった今では2GBになっている。写真を掲載するようになり、さらにデジタル一眼レフカメラで撮影した大容量画像や動画までが掲載されるようになるとすぐに容量が増えるが、いつ動画を掲載するようになるかはわからない。わずか数年での情報量は大きく増加しており、その増加がいつどのように起こるのかという予測は困難だ」

情報量増加については、今後も劇的に増加するだろうという予測がある。特に医療用の画像データが2010年には三次元化されることから、ストレージ容量全体の30%を占めるようになるのではないかという予測をIBMでは行っている。消費者1人が占める情報フットプリントは、2008年が1TBだとすると、2020年には16TBになるだろうとも予測している。 「様々な要素から予測は立てているが、実際の変化は予測困難だ。そうした予測困難な社会の変化に対して、ITとしてどのような備えをするのかという考え方をIBMとして示したのがNEDCであり、情報基盤という切り口で新しいデータセンターの在り方を考えようという提案がInformation Infrastructureだ」と吉松氏は語る。

サービスポートフォリオ一覧

「IBM XIVストレージ・システム モデルA14」と「IBM System Storage ProtecTIER Enterprise Edition V2.1」は、新たに提供される製品群の中で、買収によってポートフォリオ強化に加えられた製品だ。 「IBM XIVストレージ・システム モデルA14」について吉松氏は「予想困難なデータ増加に対応し、ユーザーから決して不満が出ないようパフォーマンスを維持するという目的に合致した、IBMとしては全く新しいアーキテクチャをもったストレージ」だと語っている。

19インチのラックに15のデータモジュールが搭載可能となっており、各データモジュールには1TBのSATAハードディスクを12個搭載できる。合計180TBの大容量ディスク装置であり、分散データ配置型のアーキテクチャをもっているのが特徴だ。搭載されたデータモジュール間でデータ容量は平準化され、さらにデータモジュールをまたいだミラーリングも行われる。

スモールスタートしてデータモジュールを追加した場合には、追加されたデータモジュールを含んでの平準化が自動的に行われるほか、トラブルのあったデータモジュールを切り離してミラーリングデータを再配置した平準化なども行われる。 「インターネット・レベルでの管理形態に適した製品。従来はよく利用するデータは高速なメディアへ、あまり使わないデータはテープ等へ、と使い分けをしてきたが、それはデータの利用形態がわかっているからできたこと。使われ方の予測ができないようなものにこの製品は向いている。アクセスの頻度は必ずしも高くないかもしれないが、利用時には高速なレスポンスが必要だという需要に応えられる。経済性と容量の双方を備えた製品だと考えている」と吉松氏は語った。

IBM XIVストレージ・システム モデルA14

IBM XIVの活用分野

「IBM System Storage ProtecTIER Enterprise Edition V2.1」は、データ重複削除を実現するゲートウェイ装置だ。データ容量増大の一因となっている重複データをゲートウェイで削減することで、データ保管容量の効果的な削減を実現する。 「実験や実際の例からすると、最大1/25の削減が実現できる。Diligent社時代にはソフトウェアとして提供していたが、IBMではその機能を最大限発揮できるハードウェアと一体化して提供することで、お客様に高い価値をお届けしたいと考えている」と吉松氏は語った。

IBM System Storage ProtecTIER Enterprise Edition V2.1

重複データ処理の流れ