マイクロソフトは26日、29日まで4日間の日程で開催される同社主催のIT技術者向けカンファレンス「Microsoft Tech・Ed 2008 Yokohama」において、「SQL Server 2008」の早期実証プロジェクト「Center of Quality Innovation(CQI)」の活動成果に関する記者発表会を行った。

総検証時間は延べ約6万7500時間

マイクロソフト 業務執行役員 本部長 サーバープラットフォーム ビジネス本部 五十嵐光喜氏

「Center of Quality Innovation(以下、CQI)」は、パートナー企業と共同で「SQL Server 2008」の早期実証を行うプロジェクトだ。「データウェアハウス」「サーバ統合」「旧バージョンからのアップグレードおよび移行」「コンプライアンス」という4つのシナリオに基づき、2007年11月15日より同社の調布技術センターで実施されてきた。マイクロソフト 業務執行役員 本部長 サーバープラットフォーム ビジネス本部の五十嵐光喜氏は「次世代プラットフォームを安心してお使いいただくため、パートナーの方々と協力して製品とサービスの新プラットフォーム対応を促進してきました」と語る。

同社では「SQL Server 2008」に関して、RTM前に広範囲なテストと評価を実施する「製品クオリティ」、展開するシステムの品質を向上するためSIノウハウを共有する「展開(SI)クオリティ」、運用負荷の軽減に役立つ情報提供と顧客の声を製品に反映する「製品維持クオリティ」という3段階のプロセスで品質向上への取り組みを実施している。今回のCQIは「展開(SI)クオリティ」部分に相当するプロセスで、機能からのボトムアップ検証ではなく、顧客のSIプロジェクトを想定したRFP(Request for Proposal)を策定し、実証評価が行われた。これにより「SQL Server 2008」に関する正しいSIノウハウの共有と、展開するシステムの品質向上を図るのである。

マイクロソフト コーポレーション SQL Server データベース エンジン開発部門 ジェネラルマネージャ クエンティン・クラーク氏

さらに、マイクロソフト コーポレーション SQL Server データベース エンジン開発部門 ジェネラルマネージャのクエンティン・クラーク氏が「品質向上への取り組みはリリース前の活動で終わるわけではありません」と語るように、次の「製品維持クオリティ」プロセスとして、出荷時点で200件以上のナレッジデータベース提供や、2カ月ごとの定期的な更新プログラムが提供される予定だ。

「SQL Server 2008」における品質向上の取り組み

CQIプロジェクトには、マイクロソフトのコンサルティング部門、SE部門、開発部門に加えて、パートナー各社の専任技術者などが参加。国内の動員技術者数は約50名で、総検証時間は延べ約6万7500時間(450人月)におよぶ大規模なものとなった。

実証テストケース数は約245ケース、検証された機能数は約80種類、検証に使用したデータ件数は約24億レコード。実証結果をまとめた技術文書の総ページ数は700ページ以上となっており、同社Webサイトを通じてWord形式での無償提供が開始されている。さらに、この実証結果にサンプルスクリプトやスキーマー情報などを追加し、4分冊化した書籍として12月に発刊する予定もあるという。

「Center of Quality Innovation」の活動成果

各パートナー企業ともに納得の実証結果

さらに、記者発表会にはCQIの各シナリオを担当したパートナー企業の代表者も出席、それぞれの実証内容を紹介した。

CQIの各シナリオと担当したパートナー企業

NEC 第一コンピュータ ソフトウェア事業部 統括マネージャ 井上浩弓氏

まず「データウェアハウス」担当のNECでは、テラバイト級のデータウェアハウスを想定し、バッチやデータ蓄積、オンライン検索などの各処理を検証。データ圧縮機能による性能向上や、「SQL Server 2008」に付属する開発ツールの操作性向上を確認したという。第一コンピュータ ソフトウェア事業部 統括マネージャの井上浩弓氏は「お客様で実際に使う環境にこだわるため、データのレコード長は1kバイト程度で、サーバもごく一般的な製品を使用しました。また、人材についてもSQL Server 2008のプロフェッショナルではなく、あえてDWHのインテグレーション要員であるSEに実施させています」と語る。

日本HP 執行役員 テクニカルサポート統括本部 統括本部長 山口浩直氏

「サーバ統合」を担当した日本HPでは、検証の成果として各統合方式に関する運用手法の確立に加え、リソースの友好的な活用方法の取得、実環境における性能傾向の把握、チューニングノウハウの取得など挙げた。同社では日本初となる「SQL Server Enterprise」のOEM製品出荷を予定しており、執行役員 テクニカルサポート統括本部 統括本部長の山口浩直氏は「CQIプロジェクトを通して得たサーバ統合のノウハウは、プラットフォームからOS、DB、コンサルティング、保守サポートまでトータルソリューションとして提供していきます」と語る。

日本ユニシス 理事 兼 共通利用技術部長 福島康夫氏

「旧バージョンからのアップグレードおよび移行」を担当した日本ユニシスでは、「SQL Server 2000」および「SQL Server 2005」を導入済みの顧客に対して「SQL Server 2008」への確実な移行方法を検証した。理事 兼 共通利用技術部 部長の福島康夫氏は「SQL Server 2005からはスムーズな移行と性能向上を確認、SQL Server 2000に関しては一部でアーキテクチャの変更や手順の工夫が必要ですが移行が可能です」と語る。

東芝セミコンダクター社 技術企画グループ 技術プラットフォーム構築担当 グループ長 伊藤篤夫氏

「コンプライアンス」の実証顧客としてCQIに参加した東芝セミコンダクター社 技術企画グループ 技術プラットフォーム構築担当 グループ長の伊藤篤夫氏は「ISO27001の取得にはさまざまな管理策が要求されます。従来は属人的な作業でPDCAサイクルを回してきた傾向がありますが、SQL Server 2008とSystem Centerの組み合わせによる作業の効率化に期待して参加しました」と語る。具体的なメリットとしては、監査機能では特権管理、ポリシーマネージメントでは変更管理、データの透過的な暗号化機能では事業継続管理がそれぞれ大幅に効率化。特に暗号化は設定が容易なだけでなく、パフォーマンスの劣化が見られないため安定した運用が可能だという。

一堂に会したマイクロソフトおよびパートナー企業の代表者たち