英国内務省の出入国管理当局である国境庁は8月19日(現地時間)、最新の顔認証技術を実装したゲートをマンチェスター空港に試験導入する計画を発表した。バイオメトリクス技術により出入国管理を強化し、2010年までに欧州経済地域(EEA)以外の外国人の99%を追跡可能にするという。このような強化策に対し、セキュリティ懸念の声も上がっている。

マンチェスター空港に試験導入されたのは、顔認証バイオメトリクス技術を搭載したゲート。当初、RFIDチップを搭載したeパスポートの所有者のみを対象とする。

査証など通常の書類検査の後、eパスポートの所有者はこのゲートを通過する。通過時に顔写真を撮影され、これをパスポートに含む情報と照合するという流れ。これにパスすると入国が許可されるが、これに加え、ランダムでマニュアルでの審査を行うこともあるという。指紋認証などバイオメトリクスを用いた入国管理には時間がかかるという批判の声もあるが、当局では、「高度技術と短時間のバランスをとったソリューション」としている。

このトライアルと同時に、英国は保安ポリシー強化を発表している。現在、技術的対策として、12億ポンド(約2448億円)を投じる「e-Borders」を進めており、顔認証による入国管理は、指紋入り査証、外国人向けIDカードに次ぐ、3つ目の保安策と位置づけられている。このような対策強化の結果、2008年に入り、e-Bordersを利用して2000人以上を殺人や麻薬取引などで逮捕したという。

国境庁はトライアル開始と同時に、マンチェスターにe-Bordersのハイテクセンターを設置する計画も明らかにしている。2010年までに、マンチェスター空港で全ての外国人をモニタリングできる体制を整えていくという。e-Bordersは合計9000人のスタッフ、3000人の警官で構成され、2014年には全ての旅客を移民・保安監視リストに照合してチェックしたいとしている。

これに対し、セキュリティ専門家はeパスポートの脆弱性を指摘している。攻撃により顔写真をすり変えてパスポートを偽造できるとし、詐欺行為を防ぐ技術の開発が急務であると警告している。また、プライバシー懸念の声もあがっているようだ。

このトライアルは同日開始し、今後6カ月間行う。英国境庁はトライアルの結果を見て、全国レベルで顔認証技術付きのゲートを導入していく計画だ。