日本オラクルは、SOA(Service Oriented Architecture)専任の部門による、SOA導入のための新コンサルティングサービス「SOA Insight」の提供を開始した。同社のSOA製品ライセンスを購入することを前提にしている企業には、基本的に無償で提供する。

「SOA Insight」は、コンサルティング能力、アーキテクチャ策定能力、システム実装経験を備えた4-8人の専門家が、企業のSOA導入、実際に運用していくために求められる要因、経営課題、ビジネス・プロセスの課題、IT課題などを明確化し、分析、情報システムを改善するために焦点を当てるべき領域を特定し、約2-4週間程度の時間をかけ、論議形式の会議を中心に実践的なSOA導入の進め方を伝授するコンサルティングサービスだ。

SOA構築のロードマップ策定や、各業界ごとの最優良事例の成功要因などを論議形式の会議を通じて提供するのが、このサービスの大きな特徴であり、同社と顧客側が双方向で意見交換する。企業は目的や、目標の成熟度に応じて特定した部分からSOA導入を開始、ロードマップに沿って、円滑にSOA構築を進めることが可能になるという。

「SOA Insight」の具体的なサービス内容としては、まず、企業のSOA成熟度を評価するとともに、ゴールを設定する「成熟度アセスメント」により、方向性が決められ、「プロジェクト優先順位策定」で、SOA導入に適した案件の選別と情報分析を行う。さらに、「効果試算」では、ビジネスバリューや、SOAの効果を試算する。

日本オラクル 遠藤隆雄 社長 最高経営責任者

また同社では、実際に導入サービスが決定している企業に実現方式をガイドするサービス「SOA クイック・アセスメント」、SOA構築のための企業内組織立上げを支援する「PMO立上げ支援」、SOA投資の決定権をもつ経営者やIT部門責任者向けに、SOAを活用することによるメリットを説く「SOAアドバイザリー」など、新サービスも開始する。

日本オラクル 遠藤隆雄社長兼最高経営責任者は「国内ではバブル経済の崩壊後、IT投資には慎重になっており、なかなかSOA導入が進んでいないようだが、このままでは、日本の競争力はいっそう低下してしまう。国内だけで事業活動をしていくのであれば、影響は大きくないのかもしれないが、グローバルでの展開となると競争に勝てない」と指摘、企業の競争力を強化し、ビジネスとITの効果がうまく循環していくための手段がSOAであると強調する。

日本オラクル 的場大輔 SOAアーキテクト本部長

「多くの企業は、SOA導入まで遠い道のりを歩んでいる。3年近くも検討して、未だ着手できない例さえある」と、同社の的場大輔 SOAアーキテクト本部長は話す。では、国内でSOA導入が進捗しないのはなぜなのか。SOAは、システムを業務プロセスの観点で、サービスという単位で部品化して、連携、開発をしやすくできるようにするしくみだとされるが、遠藤社長は「サービスとの考え方がわかりにくい面があることと、導入の効果がすぐには見えにくいことだろう。生産性を高めるものであれば、投資されやすいが、単にITプラットフォームを変換する試みと捉えられると予算が出にくくなる」と語る。

今回のサービスは「スピードアップがポイント」(的場本部長)だという。SOAの導入、運用に成功しているのは「さっさと始めている企業」(同)だからだ。「なかなかスタートできないところでは、進め方がわからないようだ。さまざま教科書があって、その内容には通じているのに、実際に取り掛かることができない」(同)との状況から脱するため、「コンサルタントに任せきりにするのでなく、顧客の思いを共有することが重要になる。このサービスでは、納得してもらうことを重視」(同)している。「製品を正しく使ってもらい、短期間で最大限の効果をあげてもらえるようにする」(遠藤社長)ことを目指す。

これらの施策には、SOA構築について、同社が「豊富な経験と実績をもっている」(同)ことが背景にある。同社は「世界で1万社、日本では250社のSOA案件を獲得」(遠藤社長)している。「ミドルウェア、データベースから、業務サービスのアプリケーション、管理ツールまで、オラクル1社だけで提供できることが強み」(同)としている。