日本IBMは24日、R&D拠点である大和研究所の取り組みを発表した。

神奈川県大和市にある大和研究所

IBMの研究・開発施設である大和研究所は、神奈川県大和市にあり、IBMリサーチを担当している東京基礎研究所、ハードウェアを開発している大和システム開発研究所、半導体ソリューションを提供するマイクロエレクトロニクス事業、ソフトウェアを開発しているソフトウェア開発研究所の4つの部門がある。

IBMでは、基礎研究所をワールドワイドで8カ所、製品開発研究所は25カ所ほど持っている。

IBMの研究所

執行役員 開発製造担当 坂上好功氏

執行役員 開発製造担当 坂上好功氏は研究開発の変革について、「IBMは、国際企業からグローバル企業へ変わってきているが、研究開発も同じように変わってきている。最初はすべてアメリカで開発・製造し、それを輸出するスタイルだったが、それがそれぞれの支社で研究開発を行う多国籍企業になり、いまは地球の上に企業が1つあるような感じで、場所に関係なく全世界が1つの研究開発を行うグローバル企業になりつつある」と語った。

グローバル企業への変革

そして、「昔はメインフレームだけを研究し、IBMの仕様が市場に受け入れられていた。しかし、非常に複雑化した現状においては、1社の仕様だけでお客様のすべての要求に応えることは難しい。1社ですべてやる必要はなく、優れているものがあればその人とパートナーシップを組んでやる」と語り、今後協業やIBMの技術を供与するアライアンスパートナーシップを積極的に行うことや、「できあがっているものがあればそれを利用し、さらに機能を追加して提供していく」と述べ、オープンソースを活用していく考えも明らかにした。

R&Dモデルの変化

大和研究所の役割について坂上氏は、IBMの一員として、全世界に通用する基礎研究を行うことと、日本の市場に貢献していくという2つの役割があると述べ、日本市場への貢献については「IBMのR&Dモデルにおいては、パートナーシップやアライアンスというのが非常に重要になっている。(お客様の)新しい技術を使ってIBMの製品に展開していく、あるいはお客様の製品をIBMを通して提供していくことによって、日本発のイノベーションをお助けしたい」と語った。

そして、大和研究所の主要な技術プロジェクトとしては、開発環境として「モデル駆動型システム・エンジニアリング」と「シミュレーション技術」、データ・アナリティクス分野として、構造化されていないテキストデータから意味を抽出して構造化データに変える「テキスト・マイニング」、システム分野として「Cell/Powerプロセッサー」「半導体関連技術」「ストレージ製品」を挙げた。

データ・アナリティクス分野は大和研究所が強い分野だという。今後はテキストだけでなく、画像や動画にも注力するという

また、大和研究所のビジョンとして「社会にインパクトを与えるイノベーティブなソリューションを創出する」ことを挙げ、フォーカス分野としては、インダストリー・ソリューションとして、「位置管理ソリューション」「システム検証・シミュレーション技術」「モデル駆動型システム・エンジニアリング」のほか、交通渋滞の緩和、CO2排出量削減のためのインテリジェントな交通システム、データセンターの省電力化などを挙げた。

モデル駆動型システム・エンジニアリングでは、車、飛行機、家電などの、ハード、ソフトからなる「システムズ」の開発における効率と品質を向上させることを目的に、モデリング言語SysML/UMLを用いた要求の分析、整理、検証を行うツールを提供。

モデル駆動型システム・エンジニアリング

位置管理ソリューションとしては、Wi-Fiアンテナにより、アクティブな位置をリアルタイムに把握して、車両や人、物の動きを追跡するシステム、データセンターの省電力化では、Tivoliを利用して、データセンター内のIT機器の温度や消費電力を可視化するソリューションが紹介された。

位置動線管理システム

天井に取り付けられたWi-Fiアンテナ。有効範囲は50mで誤差は1-2mだという。GPSを用いたシステムもあるという