綿谷りさと芥川賞をダブル受賞した金原ひとみのデビュー作『蛇にピアス』の映画版完成報告会見が15日、都内で行われ、蜷川幸雄監督、主演の吉高由里子、高良健吾、ARATA、そして原作者の金原ひとみが登場した。

左からARATA、高良健吾、吉高由里子、蜷川幸雄監督、金原ひとみ

『蛇にピアス』は現実味のない世の中で「痛み」にだけ生きている実感を得るという、19歳の少女の物語。蛇のように割れた舌「スプリットタン」を持つアマ(高良健吾)とクラブで出会ったルイ(吉高由里子)は、自分とは異なる世界に住むアマに惹かれ、同じくスプリットタンを目指して舌にピアスをあける。彫り師でサディストを公言するシバ(ARATA)らパンクな人種に接するうち、ルイは何かを求め、何かを拒んで、身体改造にひた走るのだが――。

背中に龍の刺青を入れたスプリットタンの男アマに、ルイは心惹かれていく

アマの龍と対になる麒麟の刺青をシバに彫ってもらうルイ

10代の瑞々しい感性で紡がれた、時代を代表する小説。その映画化という重責を引き受けた世界のニナガワこと演出家・蜷川幸雄監督は「金原さんが芥川賞を取ったとき本を手に取って、読みながらイメージを膨らませていくうち、これは映画になるなあと思った。映画化にあたって金原さんから注文はなかったが、選び抜かれた言葉や文体を活かしながら、原作を損ねないようにした」と撮影を振り返った。

一方、原作者の金原ひとみは試写を観た感想を訊かれ、「気恥ずかしくて(観るのに)集中できなかった」とはにかんだが、「原作に忠実でありながら、展開される蜷川ワールドにぐいぐい引き込まれた」と語り、蜷川監督に依頼したことが間違いではなかった充実感を滲ませた。

「蜷川監督にはすべてを見透かされているよう」と笑う吉高

主人公ルイを演じる吉高由里子は、これが映画初主演となるが、オーディションに合格した後、交通事故に遭いICUに入っていたという。「当たり前に生きているけど、それがとても恵まれていることなんだと思いました。地球が46億年生きている中で、私の人生なんてため息くらいの時間。だったら皆さんに捧げてやれと思って」と、ヌードやベッドシーンなど過激な撮影に挑んだ心境を振り返り、奇しくも原作のテーマでもある「生への渇望」を身を持って実感しながら役に徹したということを明かした。蜷川監督については「(演技の中で)台詞の語尾を変えたら指摘された。原作があるものをオレらで壊すんじゃないと。作品を根っこから愛している人なんだと思った」と語り、イメージとは異なる蜷川監督本来の柔和な笑顔を引き出した。

『蛇にピアス』は9月より全国ロードショー。

(C)2008 「蛇にピアス」フィルムパートナーズ