富士通は4日、記者向けの発表会を開催し、運用管理ソフトの新版「Systemwalker IT Process Master V13.3」の提供を開始したことを発表した。同製品は、統合運用管理ソフトSystemwalkerのラインナップのなかで、ITシステムの変更管理やリリース管理を担う製品。新版では、構成管理データベース(CMDB)の標準化推進団体「CMDB Federation Workgroup(CMDBf)」のドラフト仕様に準拠したCMDBを実装したことが大きな特徴となっている。

CMDBは、ITシステムの構成要素を一元管理するためのリポジトリとして、ITIL(IT Infrastructure Library)で推奨されているもの。CMDBは、ベンダーごとに独自に実装されていることが多く、複数のベンダーの運用管理ソフトを利用する場合の相互運用性が十分ではないことなどから、CMDBfで標準化へ向けた検討作業が進められていた。CMDBfには、富士通を含む主要な運用管理ソフト・ベンダー6社(富士通、BMC、ヒューレット・パッカード、CA、マイクロソフト)が参加しており、昨年7月にはドラフト仕様が公開され、同11月からはDMTFでの標準化がスタートしている。同社によると、新版は、このドラフト仕様に準拠した初のCMDB製品になるという。

Systemwalkerの製品アーキテクチャ図

ソフトウェア事業本部 システムマネジメント・ミドルウェア事業部 事業部長 新田将人氏

発表に際しては、まずソフトウェア事業本部 システムマネジメント・ミドルウェア事業部で事業部長を務める新田将人氏が、ITILに基づく運用管理の考え方とSystemwalkerの製品展開について説明。ITILによる運用改善のプロセスとして、同社では、Check、Act、Plan、Doの順番でプロセスを回す「CAPDo」のアプローチを提唱していることを指摘し、「まずは現状を把握して見える化することが大切だと考えている。当社では、そのためにシステム変更の見える化、サービスレベルの見える化、システム全体の見える化という3つの分野での製品展開を進めている」と語った。

同氏によると、このうちシステム変更の見える化を担う製品が、今回のSystemwalker IT Process Masterだという。また、サービスレベルの見える化については、「Systemwalker Service Quality Coordinator」や「Systemwalker Availability View」が、システム全体の見える化については、「Systemwalker Centric Manager」や「Systemwalker Resource Coordinator」などの製品がそれぞれ該当するとしている。

ソフトウェア事業本部 ミドルウェア事業統括部 第一ミドルウェア技術部 プロジェクト課長 堀江隆一氏

続いて、ソフトウェア事業本部 ミドルウェア事業統括部 第一ミドルウェア技術部でプロジェクト課長を務める堀江隆一氏が、今回の新版の機能強化点を紹介。CMDBを搭載したことによって、「ITシステムの変更/リリースの各プロセスにおいて、システム管理者、システム変更担当者、変更作業者が同一の構成情報を参照して、作業の計画やその結果を簡単に確実に確認することができるようになった」ことをアピールした。

発表ではそのデモとして、出張申請登録アプリケーションを修正する例を紹介。アプリ開発者から変更要求があった際に、システム変更担当者がそれを受け付けて変更の計画を作成し、その計画をシステム管理者が承認したうえで、システム変更担当者が実際の変更作業を行い、さらにシステム管理者がそれを確認するというワークフローが示された。変更要求の受付や計画作成の際には、システム変更担当者やシステム管理者が「出張申請登録パッケージRev1.35をRev1.40へ更新」「関連する業務サーバを7月30日に適用」といったCMDBに格納されたデータを参照。また、実際の変更作業では、変更前の情報と変更後の情報を比較できるようになっているほか、確認作業では、誰がいつ何を変更したかの履歴も一覧できるとした。

Systemwalker IT Process Masterの画面。すべての担当者がCMDB上の同一の構成要素を参照できる

過去に申請された依頼を一覧表示し、変更の履歴を確認できる

同社によると、CMDBは、共通のデータモデルによって運用情報やシステム情報と関連づけられており、既存の運用管理製品のデータについても、CMDBで統合的に管理することができる仕組みを備えている。具体的には、構成情報は、統合管理製品である「Systemwalker Centric Manager」が提供するエージェントと連携して自動的に収集され、CMDBに仮想的に統合(Federation)するかたちとなっている。同社では、今後、CMDBfの仕様に準拠した運用管理ソフトが登場してくれば、マルチベンダー環境での統合運用管理も可能になるとしている。価格は180万円からで、6月30日から出荷が開始されている。

なお、Systemwalkerの製品ロードマップとしては、「インフラ管理からアプリケーションやビジネスの観点での管理へと発展させていく」(新田氏)との考えから、アプリケーションの見える化やリスク管理や、投資効果の判断を支援する製品を展開していくとしている。

Systemwalkerの製品ロードマップ。アプリケーションやビジネスを「見える化」する製品を展開予定という