KDDIの小野寺正社長

KDDIは、au携帯電話とKDDI固定電話間および、KDDI固定電話相互間の国内通話料を24時間無料とする「auまとめトーク」を、8月1日から開始する。au携帯電話ユーザーの利便性向上、付加価値提供とともに、およそ3,000万に上るauのユーザー規模を活用することで、固定電話のユーザー数を増やし、この領域からの収益を拡大させ、携帯電話から、固定電話、ネット接続事業までを手がける事業者として、移動、固定の両通信サービスを融合させるFMC(Fixed Mobile Convergence)を本格的に実現させることを目指す。

「auまとめトーク」の対象となる固定電話サービスは、KDDIが家庭向けに提供する「ひかりone電話サービス」「メタルプラス電話」「ADSL one電話サービス」「ケーブルプラス電話」と、インターネット接続サービス「au one net」で提供する「050番号サービス (KDDI-IP電話)」で、同社はこれらの総称を「auおうち電話」とした。

au携帯電話とKDDI固定電話間の通話、KDDI固定電話間の通話が24時間無料に

同社の小野寺正社長は「au携帯電話のユーザーは、固定電話を『auおうち電話』に替えるだけで、固定電話からau携帯電話への通話料が無料になり、メリットは大きい」と話す。同社によれば、au携帯電話を保有する世帯数は約1,370万だが、このうち「auおうち電話」に加入していない世帯は1,190万もある。「裏を返せば、(au加入世帯1,370万のうちの)180万世帯しかKDDIの固定電話に入っていない」(小野寺社長)ため、これら「auおうち電話」に加入していない世帯に的を絞り、au携帯電話を起爆剤に固定電話のユーザー拡大を図る。

KDDI固定電話加入者の「利益」も大きくなるという

同社は先日の、au携帯電話新製品の発表とともに、端末の外装を変えられる「フルチェン」、同じくユーザーインタフェースなどを変えられる「ナカチェン」と呼ばれるサービスの開始も公表したが、これらのサービスはauショップ店頭で実行されることから、「KDDIと顧客のタッチポイントとしてauショップを活用し、来店の頻度を上げ、顧客満足度の向上につなげ、来店の機会を捉え、『auまとめトーク』のメリットを訴求していく」(同)考えだ。同社はauショップをさらに強化する方針で「ショップの数は現状で良いが、場所や店舗の規模は再検討する。再配置や大規模化はすべき」(同)としている。

2007年度通期の連結決算発表の段階で、同社は2008年度の「メタルプラス電話」の契約数は308万と予想していたが、「auまとめトーク」の効果が上がれば「もう少し、上になる」(同)とみている。小野寺社長は「基本的に、固定電話のユーザー数の増加は、基本料金収入の増に結びつく。ここに魅力がある。基本料金収入が増えることで、全体の売上げを伸ばせる。基本料金は、NTT東西の大きな収益源であり、これまで基本的には値下げをしていない。いかにうまみがあるかということだ」と指摘、「auまとめトーク」戦略の狙いを解説した。ただし、「auまとめトーク」の影響で、20億円の減収になることも明らかにした。これは、2008年度決算には織り込み済みだという。

固定電話のユーザー数拡大策には、もう一つの意味がある。「固定電話分野で、NTTの独占性を排除するため、今年度は、固定電話をある一定の数にまでもっていきたい」(同)ということだ。小野寺社長は「NTT東西の固定電話のシェアは相変わらず大きい。固定系サービスの収入は、ほとんどがアクセス回線から来ているが、アクセス回線は、ほぼNTTが独占している。顧客サービスの観点からいえば、FMCの実施は当然だが、このような状態が続く限り、NTTグループのFMCは認められるべきではない。BT(British Telecommunications)はオープンリーチ(公正競争確保のため、BTのアクセス・ネットワークを社内分社化した事業部)をつくったが、NTTは自らは何もせず、顧客の要望があるからという理由だけで、FMCを実行するのは、独占企業として問題だ」と述べ、NTTの動きを強く牽制する。

7月11日には、アップルの「iPhone 3G」が、ソフトバンクを通じて市場に登場する。これについて小野寺社長は「日本での数字ではない。一部で報道されたこと」と前置きした上で「AT&Tは、『iPhone 3G』1端末に対して、325ドルの補助金を支払っている。『iPhone 3G』の店頭価格はアップルが公表した通り(8GBモデルが199ドル、16GBモデルが299ドル)だが、これは販売奨励金モデルそのものだ。これまで何度もいってきたことだが、このモデルをやるかやらないかは、営業上の問題であり、事業者が自由に決められるべきだ。(販売奨励金である)325ドルを(アップルの発表した)店頭価格に加えると500ドルを超える。高いか安いかは議論があるが、オペレーターの仕入れ価格としては安くはない」と述べ、日本の携帯電話市場での、販売奨励金モデルの慣行が、総務省の主導で改編を迫られたことへの異論を示唆した。また「夏商戦では、当然、『iPhone 3G』の影響は受けるが、それがどこまでのもになるのかは、米国の例をみても、未だ良くみえていない。『iPhone 3G』だけへの対策ということでなく、これまでやってきた施策を着実に実行していく」としている。