米Yahoo!は6月25日(現地時間)、チェアマンのRoy Bostock氏とCEOのJerry Yang氏が株主に送付した書簡の全文を公開した。Microsoftとの交渉打ち切りに至るまでの経緯、Googleとの提携に踏みきった理由とその効果について説明している。
Yahoo!は広告分野におけるGoogleとの提携により、導入から12カ月で2億5000万~4億5000万ドルの営業キャッシュフローの上乗せになると予測する。「このキャッシュフローは利益を引き上げると同時に、戦略的な目標を達成するための手助けになる」としている。Yahoo!の目標は「ネットユーザーの起点」となることだ。検索ポータルとしてスタートした頃から変わらない目標と言えるが、Webの世界の方が大きく変化している。WebサイトがWebサービス化する中で、ネットユーザーは個人向けにカスタマイズされた情報が集まり、コミュニケーションの場となるSNSを起点とするようになった。そこでYahoo!はサービス全体にソーシャルネットワークを浸透させる方針と、開発者、広告主、パブリッシャが利益を最大限化できるエコシステムを構築するためにプラットフォームをオープンにする戦略を打ち出している。同時にビジネス面では、検索広告とディスプレイ広告を融合した新たな広告サービスの実現をカギに挙げている。
Googleとの合意でYahoo!がアピールしているのは、非排他的な契約による柔軟性だ。「Googleは、在庫を効率的に売上げに結びつける方法をもたらし、同時にわれわれが最も競争力を持っている検索技術の継続的な利用を認めている」(Yahoo!)。戦略目標実現に向けた独自の活動を維持しながら、収益を改善できるというのだ。Yahoo!の強みであるディスプレイ広告とGoogleのサービスの組み合わせは、広告主により魅力的な広告サービスを提供するという目標にもつながる。また非排他的な契約によってYahoo!は、今後も株主の利益を改善するための一手を自由に打てる。「Microsoft、または他の買収候補との今後の取引を排除するものではない」(同)としている。
MicrosoftおよびGoogleとの交渉でYahoo!は、「競争力強化」「長期的戦略プランの維持」「経済的な見返り」の3点から、それぞれの提案を検討したという。
Roy Bostock氏が出席した6月8日のMicrosoftとの会合で、Microsoftは過去に提示した金額内であってもYahoo!全体を買収する意志はないと伝えてきた。代わりにMicrosoftが提示したのは、Yahoo!の検索事業を10億ドルで買収し、将来の検索広告売上を2社で分けるという内容だった。提示にはYahoo!への80億ドルの投資も含まれていた。ただし10年間はMicrosoftを検索パートナーとする排他的な条件が付随した。さらにMicrosoftは、企業売却など一部のYahoo!の経営判断に対する拒否権を要求したという。それらの点をYahoo!は譲れず、「われわれの取締役と経営陣は、Yahoo!の戦略と財政的な見地に合致した案をMicrosoftから引き出そうと努力を重ねたが、成功しなかった」(Yahoo!)。検索広告とディスプレイ広告を融合させた新たな広告サービスで業界リーダーを目指すYahoo!にとって、検索技術は生命線となる。それを差し出せば、Yahoo!の長期戦略実現を目指す上で障害になりかねないと判断した。また経済的にもYahoo!のキャッシュフロー改善に大きなインパクトを期待できないと結論づけたという。
25日付けの書簡は8月1日に予定されている株主総会を前に、現役員への支持を株主から獲得するのが狙いだ。ただしMicrosoftとの交渉打ち切りを不満に思う株主は少なくない。まず"物言う株主"Carl Icahn氏が委任状争奪戦を仕掛けている。今月19日にはYahoo!株を170万株を保有するMithras CapitalパートナーのMark Nelson氏が交渉再開を求める書簡をMicrosoftに送付した。このような不安定な状況から、上級幹部流出に歯止めがかからないという問題も抱えている。
Icahn氏はMicrosoftへの売却を強く求め、またYahoo!経営陣がMicrosoftからの提案以上に株主の利益を向上させる代替案を打ち出せていないと批判している。これに対してYahoo!側は書簡の中で、Microsoftの関心がYahoo!全体の買収ではないことを指摘、その上でMicrosoftとの取引の可能性を残しながらGoogleとの商業的な契約を実現した成果をアピールしている。
それでも株主の懸念は残りそうだ。Yahoo!とGoogleは司法省が合意内容を調査する期間として導入を最長3.5カ月遅らせる。Googleとの合意内容の成果を実際に確認できるまで半年はかかるだろう。Yahoo!が挙げた交渉時の3つのポイントのうち、株主が納得するだけの「経済的な見返り」が実現するかは現時点では不透明。また「競争力強化」という点でも、Googleとの提携によってYahoo!の長期的戦略がサポートされるものの、競争心を持った企業が最大のライバルと提携するだろうかという疑問が残る。今回の書簡は、役員会に不満を持つ株主の疑問を晴らすような内容とは言い難く、株主総会まで、まだまだ波乱は続きそうだ。
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