キーパーソンらの人材流出が続くYahoo!、ライバルらの獲得合戦も

    Junya Suzuki  [2008/06/23]

    米Yahoo!が米Microsoftによる1株あたり31ドルの買収提案を拒絶、その後の同社による提案もすべて拒否し、米Googleとの検索広告を中心とした提携を進めるなか、混迷する事態を背景にYahoo!のキーパーソンが次々と同社を離脱する動きが加速している。

    主要部門トップやFlickr創業者など、次々と人材流出

    海外の報道機関では、先週の6月20日過ぎごろから同社を去ることになった主力部門トップらの名前を相次いで報じている。退職リストの筆頭に挙がっているのが同社ネットワーク部門エグゼクティブバイスプレジデントのJeff Weiner氏で、同氏の後任はまだ決まっておらず、今後数週間内にも後任人事を含めた新体制が発表されることになるとみられる。

    米Wall Street Journal(オンライン版)の20日付けの報道によれば、現在Yahoo!は事業強化のための新体制構築に向けたリストラを推進中だという。これは同社社長のSusan Decker氏を中心に行われており、メールや検索、ホームページ事業など、かなりの数の事業を中央の直轄とし、事業間の連携性を高めるのが狙いだという。進行中のリストラ計画は、前述のWeiner氏の抜けた穴をフォローする意味合いも持つと思われる。

    だが一方で、リストラの影響を受ける形で同社を去るエグゼクティブらも存在する。前述のWSJの記事によれば、検索部門シニアバイスプレジデントのVish Makhijani氏は同社を去り、ロシアの検索エンジン企業Yandexで新たなチャンスを模索する意向だという。また検索広告技術部門エグゼクティブバイスプレジデントのQi Lu氏も同社を去ることになりそうだ。リサーチ&戦略データソリューション部門エグゼクティブバイスプレジデントのUsama Fayyad氏や、Flickr共同創業者のStewart Butterfield氏とCaterina Fake氏もまた、これら一連の退職者に続くことになりそうだ。

    こうした退職予定者らの名前は、技術系BlogのTechCrunchが第一報を伝えており、WSJら他の報道機関がそれに続く形で独自取材を絡めた考察をまとめている。TechCrunchを発信源としたYahoo!退職予定者には、そのほかにもソーシャルブックマークサイトのDelicious(2005年にYahoo!により買収)の共同創業者であるJoshua Schachter氏やBrad Garlinghouse氏などの名前が挙がっている。

    事業強化のためとはいえ、Yahoo!はここ数週間ほどで一気に大量の有力な人材を失ってしまったことになる。推測のレベルだが、泥沼化する事態に嫌気を感じている人々も多いとみられ、今後の展開しだいではさらなる人材流出が続くことになるかもしれない。特に上記で名前の挙げられたエグゼクティブらは、その分野では業界でもトップクラスの人材である。こうしたユニークな人材を抱えているところが低迷状態ながらもYahoo!の魅力だったともいえ、米Microsoft CEOのSteve Ballmer氏の述べていた「Yahoo-Googleの提携は検索広告分野の深刻な人材流出を招く」といった発言の一端を示しているのかもしれない。

    業界ではYahoo!社員の引き抜き合戦が横行か

    最近、シリコンバレー界隈で噂になっているのが、GoogleやMicrosoftといった企業らがYahoo!社員のヘッドハンティングを次々と仕掛けているという話だ。こうした噂はMicrosoftがYahoo!への買収提案の正式発表後にあたる初春ごろから出始め、転職サイトのLinkedInでは次の就職先を模索するYahoo!社員らの様子がリアルタイムで確認できるともっぱらの評判だった。上記エグゼクティブらの話題は6月のギリギリのタイミングになってからのものだったが、社員の流出は3~4月ごろからすでに本格化し始めていたと考えられる。これについて触れた記事が、CNET News BlogのIna Fried氏の6月18日付けの投稿などでも確認できる。

    現在のYahoo!の状態を一番把握しているのは、そこに在籍している社員なのかもしれない。いくら魅力的な職場であれ、将来の見通しの立たない状況下では不安になるのも当然だろう。言うまでもなく、技術系企業で重要なのは有能な人材と技術資産だ。これら技術資産も有能な人材があってこそ生まれ、活かされることになる。人材の流出は、明らかに企業体力と寿命を徐々に削ぎ落としている。混乱の状態が長引けば長引くほど、企業としての魅力は消え失せるだろう。

    Googleとの提携決定に続き、人材流出が続くことで、MicrosoftがYahoo!買収に完全に興味を失う可能性も否定できない。Googleとの提携を発表したYahoo!だが、これ自体が時間稼ぎという見方もできる。実際、両社の提携は独占禁止法違反に抵触するとの疑いがかけられており、18日にはYahoo! CEOのJerry Yang氏が背景の説明にあたるため、政府関係者を訪問したことが判明している。Yahoo!に委任状争奪戦を仕掛けるCarl Icahn氏もまたこうした事態を憂慮しており、8月1日の株主総会での早期事態決着を望んでいるに違いない。

    関連記事

    米Yahoo!と米Googleが広告サービスで提携合意 [2008/6/13]
    Yahoo!の買収防衛策を巡り、同社役員とアイカーン氏が応酬 [2008/6/6]
    MS-Yahoo!買収合戦に登場した"カール・アイカーン"とは何者なのか? [2008/5/27]
    米Yahoo!が株主総会延期、アイカーン氏の委任状争奪戦受け [2008/5/23]
    米MS CEOバルマー氏「Yahoo!そのものの買収に興味はない」 [2008/5/22]
    MSがYahoo!の検索広告部門の買収を提案か - 日本事業の切り離し案も [2008/5/20]
    MSがYahoo!との交渉を再開、両社に残された数少ない選択肢とは? [2008/5/19]
    米Microsoft、完全合併以外の選択肢を提示してYahoo!との再交渉を開始 [2008/5/19]
    Yahoo!買収戦が新局面、Icahn氏が強力な取締役候補リストを提示 [2008/5/16]
    MS-Yahoo買収攻防、今度は"企業乗っ取り屋"のC・アイカーン氏が参戦 [2008/5/14]
    上か? 下か? MS買収案撤回で揺れ動くYahoo!株価と思惑 [2008/5/7]
    【速報】MS、米Yahoo!買収を撤回へ [2008/5/4]
    米Yahoo!、Microsoftの最後通牒も拒否 [2008/4/8]
    米Yahoo!が役員選出期間を延期、Microsoftらの影響力排除が狙いか [2008/3/6]
    もしもYahoo!がMSに買収されたら……Yahoo!のサービスはどうなるの? [2008/2/26]
    Yahoo! CEOのYang氏が株主にメール送付 - MS買収拒否の妥当性を改めて強調 [2008/2/15]
    MS、Yahoo!の買収提案拒否に遺憾のコメント [2008/2/12]
    米Yahoo!、米MSからの買収提案を役員会の全会一致で否決 [2008/2/12]
    "企業乗っ取り屋"のCarl Icahn氏、自身のブログサイトを開設へ [2008/2/6]
    支配的立場にあるのはGoogleでは? - Yahoo! 買収計画を巡りMSが反論 [2008/2/4]
    GoogleがMSのYahoo! 買収に重大な懸念を表明 [2008/2/4]
    Yahoo!がMicrosoftの買収提案にコメント -「戦略プランに沿って対応」 [2008/2/2]
    米MSの米Yahoo!買収提案、その意図は「スケールメリット」と「共通のライバル」 [2008/2/2]
    【続報】米MS、米Yahoo!に総額446億ドルの買収提案 [2008/2/1]

    関連サイト

    関連したタグ

    新着記事

    特設サイトの情報

      人気記事

      一覧

      イチオシ記事

      新着記事

      特別企画

      マイナビニュースマガジン