日本オラクル 製品戦略統括本部 アプリケーションビジネス推進部長 塚越秀吉氏

日本オラクルは、PLM(Product Lifecycle Management)アプリケーションの最新版「Agile PLM 9.2.2.4」を発売すると発表した。ERP、SCMなどのオラクルの業務アプリケーション製品群「Oracle Applications」との連携、設計情報の可視化の点で機能が強化され、導入する企業は、この製品のもつ機能を全社的に共有できるようになり、成長への推進力を支援する武器として位置づけられ、同社の「企業向けアプリケーション戦略に合致した」(同社 製品戦略統括本部 アプリケーションビジネス推進部長 塚越秀吉氏)製品となっている。

PLMは製品の企画に始まり、設計、生産、販売、保守に至るまでのすべての工程についての製品関連情報を一括管理する経営手法とされており、開発期間の短縮、製品収益の向上といった用途に留まらず、環境規制対応のための全社的な情報基盤としても活用されるようになっている。

「Agile PLM」は、開発プロセス管理、関連部門のコラボレーション、統合BOM(部品表)管理を行うアプリケーション製品で、多様な機能を担うアプリケーションを用意している。設計、購買、製造などのデータを統合化し、製品情報を一元的に管理でき、複数の主要CADシステムとの相互連携も可能だ。設計中の製品情報もリアルタイムで確認できる。

RoHS(Restriction on the Use of Hazardous Substances:有害物質使用制限)指令環境規制や、法令への順守状況を管理する「Agile Product Governance and Compliance」、品質管理を担い、不具合発生の予防措置や是正措置管理を支援する「Agile Quality Management」、仕入先管理、購入部材の見積もり業務など調達/原価管理といった機能をもつ「Agile Product Cost Management」も備えている。

プロジェクト管理の点では、「Agile Product Portfolio Management」が、プロジェクトと製品情報を連携させ、リソースの配置、スケジュール作成とスケジュール情報とのリンクなどを通して、プロジェクトの進捗状況を多角的に俯瞰、リソース稼働率の最大化、納期の遵守につなげるとともに、コストなどの指標を参照、プロジェクトの方向性の確認、その修正といった意思決定を支援する。

これら全体的な製品ライフサイクルは、フェーズ、製品、プロジェクトごとに、コスト、スケジュール、品質、収益などの観点で明確に把握され、オラクルのデータ転送機能「Oracle Data Integrator」とレポーティング機能「Oracle Business Intelligence」を活用することで、プロダクトダッシュボード上で確認でき、開発部門責任者、製品担当者や経営者層は、製品戦略や経営判断の材料として活用できる。「市場の変化に対し、製品が迅速に対応できるよう、企業の事業戦略を支援すること」(塚越部長)が目的となる。

最新版の大きな特徴は「アプリケーション統合アーキテクチャ(AIA)」により、「Agile PLM」と、オラクルの業務アプリケーション「Oracle E-Business Suite」、「JD Edwards EnterpriseOne」とのSOAによるプロセス統合が可能になったことだ。異なる「Oracle Applications」間の業務プロセス連携を可能にするためのパッケージ「プロセス統合パック」をこの夏に提供する予定で、データ、システム、インタフェースが統合され、ERPとPLMが、単一のシステムとして稼動する。

日本オラクル 製品戦略統括本部 アプリケーションビジネス推進部 ディレクター 岡田行秀氏

同社 製品戦略統括本部 アプリケーションビジネス推進部 ディレクターの岡田行秀氏は「これまでのPLMは、いわば、CADの一部のような位置づけで、開発部門だけに閉じられていたような側面があった。特に日本では、その傾向が強かったのでは。しかし、今回の製品はERPをはじめとするアプリケーションとのプロセス連携や、BIとの連動により、情報を全社的に共有できることになり、単なるPLMではなくエンタープライズPLMになっている」と話す。

「Agile PLM」は、米オラクルが2007年5月に買収した米アジャイル・ソフトウェアの製品だが、この1年で、SOAで自在に制御できるオラクルのアプリケーション製品体系に組み込まれた。今回の機能強化により「Agile PLM」は「オラクルの製造業向けソリューションの中核的な要素になって」(岡田氏)きており、ERPとともに、製造業向けに積極展開していく意向だ。

同社によれば、ハイテク、食品、自動車部品、機械やヘルスケアなどの業界からの需要が拡大しており、グローバルで1,300社以上の導入実績があるという。塚越部長は「アプリケーションビジネスの領域で、PLMの成長率はSCMよりも高い。国内ではまだ、PLMのパッケージの浸透率は低いが、すでに案件はとっており、買収・合併する以前のアジャイル年間分を1四半期で獲得している」と述べ、国内でもPLMに対する需要の勢いが強くなっていることを指摘、市場拡大に期待を込める。