ニッコムは29日、フィンランドのソフトハウスである3C(CCC)より組込機器向けUIデザイン/開発の統合開発環境「Cybelius Maestro」の事業を買収したことを発表した。

これまでニッコムは、CCCとの間に同ソリューションにおける代理店契約を結んでいたが、組み込み機器市場は日本を始めとしたアジアが中心であり、同地域における高い潜在ニーズがあるものとして同買収を決定したという。

ニッコム 代表取締役社長兼CEO 小島秀登氏

これにより、ニッコムはCybelius Maestroの所有権を獲得し、製品の開発、メンテナンス、サポートの提供を行うこととなる。ニッコムの社代表取締役社長兼CEOである小島秀登氏は「同買収により、今後ニッコム自身が、Cybelius Maestroの機能向上と応用範囲の拡大を図る役割を担うようになる。具体的には日本のユーザーからの要望をダイレクトに製品に反映できるようになるほか、タイムリー、かつきめ細かいサービスの提供ができるようになる」と語る。

Cybelius Maestroは、フィンランドの国営の技術研究センター(VTT)とNokiaをはじめとする産業界が共同で開発したシミュレーションとモデリング、開発環境が統合されたソリューション。主に国内外の携帯電話やデジタルカメラ、プリンタなどの電子機器向けのUIデザイン・設計に用いられてきた実績を持つ。

電子機器の物理的な外観(PUI:Physical User Interface)とPUIのディスプレイに表示されるGUI、GUIの画像遷移、ソフトウェアの構造などをビジュアルとしてモデル化することが可能だ。

Cybelius Maestroの操作画面(PUI、GUI、基本コンポーネント、状態遷移図などを表示することが可能)

複雑な操作は必要なく、用意されたコンポーネントをPUIにドラッグ&ドロップで配置した後、決定されたGUI上にこれも用意されたコンポーネントを配置することでUIの作成が行われる。こうして作成した各UIに対して状態遷移図を用いて、それぞれの動きを決定。コンパイルを行うことにより、自動的にJavaのソースコードと実行ファイルが作成、シミュレーション上で実行することにより、動作の確認ができる。

作成したモデルから、PC上で実行可能なシミュレーション(Javaコード)を自動的に生成

また、作成したモデルから、実機向けのソースコードを自動生成することも可能なほか、Javaアプレットとしての出力も可能なため、Webサイト上での製品紹介などに流用することもできる。

上流工程で使用する場合、製品コンセプトやユーザビリティの早期検証や開発チーム間におけるコミュニケーション支援が可能になるほか、ソフトウェアとハードウェアの並行開発による作業の効率化が可能になるとしており、「開発コストが1/3になったユーザーもいる」(同)とのこと。

また、下流工程では、ソースコードの自動生成機能を用いることによる開発の省力化が可能となる。小島氏は、、「ユーザーの中には、開発工数を半分に削減した事例もある」とその効果の程を強調する。

現在、同ソリューションはバージョン2.6.2が提供されており、2008年7月にはマイナーバージョンアップとなる2.6.3のリリースが予定されている。2.6.3では大きな変更は加えずに、ユーザーから要望の多かった部分の機能改善を中心に行われるという。