EMCジャパン 代表取締役社長 諸星俊男氏。社長就任から約1年が経過した

EMCジャパンは28日、同社のエントリレベルおよびミッドレンジのストレージ製品を常時在庫しておく「サプライ・チェーン・ロジスティクス・センター」(以下、SCLC)を6月1日から成田に開設することを発表した。諸星俊男氏が同社代表取締役社長に就任してから約1年、この間、国内におけるパートナービジネスの強化やサプライチェーンの効率化が図られてきたが、今回のSCLC開設によりその基盤がほぼ固まったと言えそうだ。

SLSCは、DHLサプライ・チェーンと日本通運と協業で運営される。千葉県成田市にあるDHL成田物流センター内に開設され、延べ床面積約135平方メートル、ミッドレンジストレージ製品「CLALiX」シリーズが約100台ほど格納できるという。好調なミッドレンジ/ローエンドモデルの出荷の伸びを見込んで、増設用スペースも確保済みだ。また同センター開設により、これまで製品受注を受けてから出荷まで2 - 3週間かかっていたリードタイムが、最短24時間に短縮され、「多様化する顧客のニーズに柔軟かつ迅速に対応できるようになった」(諸星氏)という。在庫コストはEMCが全額負担するため、パートナーは余分なコストや余剰在庫を抱える必要はない。

成田に開設される「サプライ・チェーン・ロジスティクス・センター」(SCLC)の見取り図。今まで日本国内向け製品は、受注を受けてからアイルランドで組み立てられ、国内に送られていた。今後はSCLCで受注・発送を受けるため、納期が大幅に短縮されることになる

諸星氏は昨年6月の社長就任以来、同社がそれまで弱かったとされる国内パートナービジネスの強化にさまざまな面から取り組んできた。「パートナー・サポート・センター」(PSC)の設立、パートナーによる案件登録システムの推進、パートナーの発注と製品構成をサポートする「チャネル・エクスプレス」(CxP)の日本語での提供、などはその一例だ。結果、パートナー案件登録の売上は四半期連続で50%増という実績を上げている。

「顧客がEMCに期待するものが変わりつつある」と諸星氏は言う。その背景には「2つの要素がある。1つは従来からの"Simmetrix"などの大規模ユーザが、単にストレージを購入するだけでなく、ILM(formation Lifecycle Management: 情報ライフサイクル管理)を中心としたコンサルティングを求めていること。もう1つは"CLALiX"などのミッドレンジ/ローエンドモデルの需要が大幅に増えていること」(諸星氏)がある。現在、国内のストレージビジネスはSMB(中堅・中小企業)による受注が大きく伸びており、これまで大企業ユーザが中心だったEMCもミッドレンジ/ローエンドモデルへの注力を強めている。

EMCジャパンは国内販売の大部分をパートナー経由で行っている。SMB向けの案件が増えているとなれば、なおさらパートナーとの密な協力体制は欠かせない。今回のSLSC開設により、同社のパートナービジネス基盤強化はある一定の完成を見たと言っていいだろう。この基盤をもとに、新規顧客獲得に向け、さらなるビジネス機会の創出を狙いたいところだ。