米ハーバード大学医学部(Harvard Medical School)のCenter for Mental Health and Mediaで研究を進めるLarry Kutner氏とCheryl K. Olson氏は、暴力的な描写が含まれたバイオレンスゲームが子どもたちの行動に与える影響などを幅広く調査した研究報告書「Grand Theft Childhood: The Surprising Truth About Violent Video Games and What Parents Can Do」を発表した。

私生活でも夫婦として共にティーンエイジャーの子どもを育てている両氏は、青少年犯罪とバイオレンスゲームの関連性などを指摘する一般論に違和感を覚え、4年前、今回の調査研究に着手した。米司法省(DOJ: Department of Justice)のサポートも得、詳細な生活実態を把握して分析することを目的に、全米各地の1,200人以上の中高生男女とその半数ほどの保護者などを対象としたインタビュー調査を実施した。

同調査結果によれば、大半の保護者の認識とは裏腹に、親が知らない間にバイオレンスゲームを日常的にプレイしている子どもたちが増えている。特にティーンエイジャー女子の間で、この傾向が以前より顕著に見られるようになってきた。今回の調査でも、女子中高生に最も人気のテレビゲームは、シミュレーションゲームの「The Sims」だったが、続く2位には、いわゆるバイオレンスゲームに位置づけられる「Grand Theft Auto」シリーズがランクインした。

米国内では、ESRB(Entertainment Software Rating Board:娯楽ソフトウェアの自己審査団体)によるレーティングなどで、子どもたちが過激なゲームをプレイしないように保護する制度が導入されている。しかし、レーティング対象となっていない過激なバイオレンスゲームなどをインターネットから入手して、秘かに楽しんでいるティーンエイジャーが少なくないと判明。一部の超過激な内容のバイオレンスゲームが、学校内でのいじめ問題へに影響している状況も観察されたようだ。

しかしながら、今回の調査結果で興味深いのは、バイオレンスゲームのみが、特別に子どもたちの日常生活にマイナス面の影響を及ぼすわけではないというデータが挙げられた点。暴力的な描写が含まれた映画、小説、漫画など、他のメディアであっても、それぞれの子どもの状況に応じて影響力の度合いは変化するものの、バイオレンスゲームが与えるのと同程度のマイナス面の影響があるという。

また、保護者の適度な監督のもとにプレイするならば、一部のバイオレンスゲームのプレイ後には、ストレス発散効果や特定の運動効果なども認められるケースがあった。オンラインマルチ対戦などに対応したゲームであれば、コミュニケーション能力の向上というプラス面の影響も認められたと報告されている。

本調査では、短絡的に未成年者によるバイオレンスゲームの利用を禁止するような世間の風潮は、あまり好ましいものではないと結論付けている。