NTTドコモの中村維夫社長

NTTドコモは25日、2007年度通期(2007年4月-2008年3月)の連結決算を発表した。売上高は対前年同期比1.6%減の4兆7,118億円、営業利益は同4.5%増の8,083億円、税引前利益は同3.6%増の8,007億円、当期純利益は同7.4%増の4,912億円で、減収増益となった。2007年8月から開始した新たな割引サービスの影響などにより携帯電話収入が減少したが、端末の販売方式改変により代理店手数料が低下、増益となった。また、コスト効率性向上、経営の迅速化などを目指し、全国の地域ごとにある「地域ドコモ」8社を7月に吸収合併、全国1社体制に移行すると発表した。

「ファミ割MAX」「ひとりでも割」など2007年8月以降に投入した新割引サービスの契約数は、2008年3月末には合計で2,200万に達している。さらに、2007年度の「2ヶ月くりこし」失効見込み額の収益計上について見積り方法を変更したことなどの影響も受け、携帯電話収入は前年度比で1,636億円減少した。端末機器販売収入は、販売数が減少したが、販売手数料を抑えられる新販売方式を2007年11月に開始したことから、同15.3%増の5,466億円だった。端末代が高くなる代わりに基本使用料が安くなる「バリューコース」の選択率は同年度末で96%に達している。

同社の契約数は年度末で同1.5%増の5,338万8,000に上り、そのうちFOMAは4,394万9,000となっており、全体に対する比率は82.3%。2006年度末には67.5%、2005年度末には45.9%だったので、この2年間でFOMAへの移行は順調に進んでおり、今年度末にはFOMA普及率が90.9%になると予想している。同年度通期の総合ARPU(Average monthly Revenue Per Unit:1契約者からの月間平均収入)は同5.1%減の6,360円で、音声ARPUは同11.3%減の4,160円だったが、パケットARPUは同9.5%増の2,200円だ。市場シェアは52%で、前年度比2.4ポイントの減。

引き続き、ARPUは低下傾向

2008年度の業績予想は、売上高が同1.2%増の4兆7,680億円、営業利益は同2.7%増の8,300億円、当期純利益は同2.4%増の5,030億円としている。携帯電話収入は、割引きサービスの影響などにより約4,140億円の減と見込んでいるが、一方、端末販売収入は、新たな端末販売制度の浸透で、約4,180円の増を見込んでいる。また、契約数は同2%増の5,447万としており、純増数108万を目指す。

2007年度は減収、来期は増収増益を目指す

MNPの衝撃で苦戦、新たな収入源求めホームネットワークサービスに着手

「減収増益」だった。営業利益は予想していた7,800億円を300億円近く上回った――しかし、厳しい1年だったことは疑いない。同社の中村維夫社長は「番号ポータビリティー(MNP)の衝撃は非常に大きかった。2万人の社員の間でも、これではいけないとの意識が強くなった」と話す。MNPが導入されたのは2006年10月だが、2006年度の同社の解約率は通期で0.78%だ。しかし、上期には0.62%だったのに対し、MNPが開始された下期には0.95%にまで急上昇している。2007年度通期の解約率は0.80%で、前年度比2ポイント増だが、やはり上期は0.90%と高かった。「ファミ割MAX」などが始まった8月に下降傾向となり、11月開始の「バリューコース」も好影響し、第4四半期(2008年1-3月)には、0.68%まで低下した。

新しい割引制度と販売方式が、解約率に歯止めをかけた

ちょうど1週間前の今月18日、同社は新しいブランド施策と企業ロゴを発表した。既存客に焦点を当てており、「これまでのビジネスモデルでは新規顧客の獲得と解約防止が重点だったが、新しいビジネスモデルでは顧客との関係の深さ、長さを重視し、こちらに軸足を置く。新たな割引サービスや販売モデルは、できるだけ長くドコモの携帯電話を使ってもらえるよう導入した」(中村社長)ことが背景にある。中村社長は「日本では、携帯電話の累計契約数が1億を超え、市場は成熟している。事業者が技術や機能で主導する時代ではく、顧客主導になってきている、潮目は変わった」と語り、戦略変換の必要性を説明した。

MNPという大波とともに、携帯電話産業の従来の常識や慣行をいわば"破壊"する手法で新たに市場に乗り込んできたソフトバンクの猛攻に対し、常にシェアの過半を握ってきた同社も、MNPを起爆剤に同社追撃の態勢強化を図っていたKDDIも、動かざるを得なくなった。値下げには追随しないとしてきた両社とも値下げを余儀なくされた。「これまでの従量制収入の縮小は避けられない。新しい収入源が必要」(同)になってきた。

同社の考える収入モデルは大別すると3つある。まず、iモードを基盤とする「生活アシストビジネス」で、クレジットなど金融関連、広告、コンテンツ販売の料金回収代行、物販などが要素となる。そして、ローミングや国際通信などの「国際ビジネス」があり、もうひとつは、パケ・ホーダイ、iチャネルなどの「サブスクリプション/コンテンツ収入」がもたらされる「定額契約ビジネス」だ。

今回新たに示されたのが、今年度第1四半期中をめどに着手する「ホームエリアと連携する各種サービス」だ。これは定額契約ビジネスと生活アシストビジネスの両領域にあたる。「Wi-Fi(無線LAN)と3G(FOMA)に対応したデュアル端末をコンシューマ向けに用意する」(同)予定で、ブロードバンド回線を介して、ドコモのネットワークと無線LANのアクセスポイントを接続、そこからデュアル端末に、割安な音声通話、高速パケット通信、最新情報の自動配信などのサービスを提供する。家庭内ネットワークとも連携させる意向で、時期は未定だがフェムトセルも活用する。これも基地局用を家庭向けに使用する。詳細は明らかにされていないが、同社では、このサービスから「サブスクリプション収入」を得ていく考えで、新たな定額制ビジネスと位置づけているものとみられる。