グリーン化は、ビジネスにも効果を与える

アクセンチュアは、経営視点で推進するグリーンITについての基本方針を示した。環境に貢献することができる領域全体を俯瞰した上で、企業で活用されるITがいかに環境に貢献できるかを軸にするとともに、グリーンITが、コスト削減、効率性向上など、ビジネスにも資する点を重視しており、データセンターの省力化にとどまらず、IT機器の電力量削減、オフィス環境、調達方法、サプライチェーン、働き方の変化、経営陣・社員の意識改革まで幅広い領域を視野に入れている。

Accenture グリーンITサービス グローバル統括パートナー ステファン・ナン氏

同社によれば、これまで企業のIT支出は一般的にみて、その65%は保守に費やされ、更新が25%、新規投資は10%にすぎない。米Accenture グリーンITサービス グローバル統括パートナー ステファン・ナン氏は「2000年問題、あるいはSOX法の施行など、マイルスト-ンとなる出来事が、大きなITの新規投資のきっかけとなってきた。グリーンITは、これらと同じように、企業にとって変革の源流になるのかどうか、考えておかなければならないだろう」と話す。

今、なぜ、グリーンITが産業界での重要事項になっているかについて、同社では、経営というもの自体が、グリーンを求めているとともに、高いパフォーマンスを得るために、ITを効率的、効果的に活用することが求められており、ビジネスのグリーン化は、ビジネスプロセスの効率化、生産性向上にもつながるとみており「グリーン化プログラムは、株主のための価値にもなる」(ナン氏)と考えている。

課題は、データセンターだけではない

アクセンチュア 武田安正 副社長

最近のグリーンITにまつわる論議では、従来、エネルギー消費の多いIT資産の典型として、データセンターが特に槍玉に上がることが目立ったが、同社は「電力消費量で見れば、データセンターは、一般のオフィス環境の約100倍だが、全体的には、面積で比較すれば、オフィス環境はデータセンターの100倍ということになる。データセンターだけに注目しても、必ずしも、二酸化炭素排出量の十分な抑制はできない」(アクセンチュア 武田安正 副社長)とみており、ITが環境に貢献できる領域を多面的な視点で俯瞰すべきだとする。

ITが環境に貢献できる領域としてまず、第一に、同社が注目するのは「ワーキングプラクティス」だ。企業が、ITを活用して業務を遂行するに当たって、場所、プロセス、構造などを注視し、どのようなデバイスを使えば良いのか、といった点から考慮、「技術を利用して、いかに賢くビジネスをするか」(武田氏)が主題だ。例えば、モバイルの活用は有効な手段の一つだ。「オフィス環境」では、「何年も前から提唱されているにもかかわらず、あまり進展していない、ペーパーレス化」(同)の本格化、オフィスに人がいない場合の、周辺機器の電源オフ、電話の音声と他のデジタルデータがネットワークを共有できるVoIPなどが省エネルギー、省資材のための要素となる。

データセンターについては、仮想化技術やシステム全体の最適化を図り、真に必要なITリソースを求められる場を自動配置する「オーケストレーション&プロビジョニング」技術により、サーバやストレージを統合化することで、ハードの物理的台数を減らすことが可能になり、設置面積、消費電力の抑制が実現する。また、調達の面では、パッケージの再利用、不要になった機器の廃棄、あるいはリサイクルを考慮すべきだという。

ナン氏は「原材料の削減、仕事の仕方の合理化、サプライヤや顧客とのコラボレーションの改善、より賢明なワークスタイルの確立などによるグリーンITの推進は、株主にとっての価値も増大させることになる」と指摘、ITが関連するすべての領域に渡り、地球環境にさまざまな配慮をすることは同時に、ビジネスそのものに、有形、無形の効果をもたらす、との考えを示した。

同社では、各企業がグリーンIT施策を実行するための支援の一環として、まずは、各社が自社のグリーンITの成熟度を把握して、各領域での対策、立案を考えることが可能な支援ツールを開発している。どの分野で、どのような対策を講じるべきであるか、その企業の成熟度評価を基に分析できる「GMM(Green Maturity Model)アセスメント」と、データセンター内で、どのような対策を実行すると、環境負荷がどのくらい低減するかを分析する「データセンター・エスティメーター」の二つで、顧客へのサービス提供に活用している。

アクセンチュア システムインテグレーション&テクノロジー本部 データセンターテクノロジ&オペレーションズ 統括パートナー 森泰成氏

地球温暖化抑止のため、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスを、2008年~2012年の5年の間に1990年の水準から5%以上削減することを定めた京都議定書は、今年がこの目標期間の初年となる。同社によれば、IT機器の2010年の予想電力使用量は約900億KWhで、5,000万トンの二酸化炭素に相当、IT機器の使用電力量削減策で30%低減できるとすると、約1,500万トンの削減になる。さらに、ペーパーレス化、物流、SCM、テレワークなど、ITを用いたグリーン化により約2,650万トンの削減ができるという。

同社システムインテグレーション&テクノロジー本部 データセンターテクノロジ&オペレーションズ 統括パートナーの森泰成氏は「日本全体のグリーンITは、2010年までに、京都議定書の目標のおよそ3割の二酸化炭素排出量を削減することになり、十分、貢献できる」と語る。