Sun MicrosystemsによるMySQL買収が2月26日に完了して以来、国内では初めてとなるサン・マイクロシステムズとMySQLの共同会見が9日、行われた。すでに米国では事業統合がなされており、MySQLはSunのビジネスユニットの1つになっているが、国内では「年内を目処」(サン・マイクロシステムズ 代表取締役社長 末次朝彦氏)に統合を進めていく予定だ。当面、国内におけるMySQLの販売は野村総研やNTTコムウェアなどの従来からのMySQL販売パートナーによるものが中心だが、5月上旬からはサンによる販売も開始される。

国内での事業統合に向けた準備の第1弾として発表されたのは、

  1. 「MySQL Enterprise」「MySQL Cluster」およびMySQL OEM製品の日本語による製品サポート
  2. 日本語によるナレッジベース(MySQL内部の技術者が執筆した技術記事、約1,000件)の提供
  3. サーバ自動監視ツール「MySQL Enterprise Monitor」の日本語版の提供

の3点。日本語によるサービスが大幅に強化されていることがわかる。とくに日本語サポートに関しては、買収による人員増が直接的に功を奏した形と言える。

9日から提供開始になったMySQL Enterpriseの日本語サポートのログイン画面。MySQL Enterpriseには「Basic」「Silver」「Gold」「Platinum」の4段階のサポートがある。詳細はこちら

MySQL内部の技術者が執筆した2,000本の技術文書のうち、日本語化された1,000本がMySQL Enterpriseユーザ向けに提供される

複数のMySQLサーバを一括監視するMySQL Enterprise Monitor

MySQL出身で、現在はSunでダイレクターを務めるラリー・ステフォニック氏は、アジア太平洋地区におけるMySQLビジネスの責任者でもある。同氏によれば「(同地区での)MySQLの販売は90%が約50社のパートナーによる販売で、うち20社以上が日本の企業」だという。これにはNECシステムテクノロジー、NTTコムウェア、住商情報システム、野村総合研究所などが含まれる。今回の日本語サポート強化の発表は、これらの販売パートナーにとっても朗報となるはずだ。

事業統合後の市場の動きは…

Sunのエグゼクティブたちは常々、「Sunはオープンソースに最も寄与している企業」と口にする。実際、SPARC、Java、Solarisなど、数々の自社プロダクトをOSS化しており、OSSコミュニティにも積極的に関与している。優秀なOSS開発者を自社に雇い入れることも多い。

「Sunはさまざまな技術を所有している。その中で1つだけもっていなかった技術がデータベースだ」と末次氏が言うように、RDBMSは同社がどうしても手中に収めたかった分野であった。その中でも、OSSの雄として名高いMySQLについては、Jonathan Schwartz CEO自らが「どうしても手に入れたい企業」と公言するほどで、数年越しのアプローチでようやく買収合意に達したときの喜びはひとしおだったようだ。

今回の買収によって、Sunはデータベースという中核技術を、MySQLは強力な開発/販売/サポート体制を手に入れることができた。では、両社の顧客にとってのメリットは何か? 末次氏は「多様な選択肢による顧客のビジネスの拡大」を挙げる。

MySQLと事業統合するからといって、競合関係にある企業やOSSプロダクト - 具体的にはOracleやSybase、PostgreSQLなどとの関係が弱まったりすることはない、と両社のトップは買収直後から事あるごとに断言している。末次氏も「その手の質問はよく受けるが、MySQLですべてロックインしてしまうつもりはない」とする。「事業統合により、顧客により多くの選択肢を与えることができるようになった。(Sunが取り組んできた)Solarisのさまざまなオプティマイゼーションの実績 - SPARC以外でも動作するようにしてきた経緯を見ていただければわかると思う」(末次氏)

買収発表後、MySQLの1日あたりのダウンロード数は、5万から6万に増加したという。両社はこれを「買収が好意的に受け止められている証拠」と見ている。国内での事業統合後、市場はどのように推移していくのか、競合他社、とくにOracle 11gというNo.1シェアのRDBMSを擁するOracleはどう動くのかにも注目していきたい。

事業統合のスケジュール。今秋には東京で「MySQL User Conference Japan 2008」の開催が予定されている