【レポート】

元MySQL CEOがアルファブロガーに語った"MySQL買収劇"

Sun MicrosystemsがオープンソースのNo.1データベースベンダであるMySQL ABの買収を完了してから約1カ月が経過した。1月16日に買収が発表されて以来、とくにMySQL側の関係者は詳細について多くを語ることはなかったが、先日、SunのWebサイトにて、元MySQLのCEOで現在はSunのデータベース部門のシニアバイスプレジデントを務めるMarten Mickosがインタビューに応じた。インタビュアーは、元AppleフェローでベンチャーキャピタリストのGuy Kawasaki。シリコンバレー界隈では知らない人がいない超有名ブロガーでもある。この人の前では、Steve JobsやSteve BalmerといったIT業界の重鎮たちもなぜか素直に心を開き、思いもよらないコメントを口にすることがある。

本当のところ、MySQLはSunに買収されてhappyだったのか - 忌憚のないQ&Aは同インタビュー(以下、インタビュー)を読んでいただくことにして、ここではそのやり取りからかいま見える、同買収の影響について考察してみたいと思う。

"たった1つだけ手にしたい会社があるとすれば、それはMySQLをおいてない" - Jonathan Shwartz

買収発表後、SunのCEOであるJonathan Shwartzは自身のブログで、数年前からMySQLにアプローチしていたことを告白している。6年前に最初にMikosと食事をして以来、Shwatrzは盟友のRich Green(Sunのソフトウェア部門シニアバイスプレジデント)と共に、何度も「1つの会社にならないか」と誘いをかけたという。

MySQLにはほかにも買収話がいくつかあったようだが、それらの話が具体化することはなかった。あくまでMikosは「株式会社として、独立企業として存在すること」(インタビュー)にこだわっていたからである。では、なぜその方針を急転換して、MySQLがSunの一部となることを決意したのか - それについてMikosはAlwayas Onというサイトで心情を吐露しているが、本インタビューでは「去年の11月、Jonathanと食事をしたとき、Sunと一緒になったほうが(MySQLにとって)万事うまく行くと感じた。そうと決まったらさっさとコトを運んだほうがいい。スウェーデンのホッケー用語で言うところの"raka puckar"、つまりストレートに決めて行こうということで話がまとまったんだ」と、一気に買収がまとまった経緯について答えている。

OSS頼みのSMBへの影響はいかに

本インタビューのメインとなっている部分は、「SMB(small & medium business)への影響をどう捉えているか」である。ご存じの通り、MySQLは世界で最も使われているオープンソースのRDBMSである。Oracleのような商用DBを購入できないSMB層には、欠かせないシステムと言ってもいい。その頼みの綱がSunの一部門となってしまうことで、今までのように低コストで利用することができなくなってしまうのでは…という不安がSMBの間でよぎった。

これに対し、Mikosは「(MySQLを利用する)SMBには2つのタイプがある」としている。1つは、Web 2.0系のベンチャー企業としてスタートしたが、次第に会社規模が大きくなっていった会社、例としてFacebookやSecond Lifeを挙げている。これらの企業は、会社の規模に伴ってシステムも巨大化する。つまりデータベースシステムにもそれなりのパフォーマンスとスケーラビリティが求められるわけだが、Mikosは「これからはSunのエキスパートもいるわけだから、彼らにとっては喜ばしいこと以外の何物でもないだろう」と答える。

もう1つのグループは、「便利で、信頼性のある、低コストのシステム」を必要としている、いわば本当に"小さな"企業だ。Mikosはこれらの企業にとっても今回の買収は「より高いレベルの満足を得られることになる」としている。その理由として、買収されたとしてもMySQLがGPLベースのOSSであることには変わりないこと、そして、Sunによる"ワンストップ"のサービスが得られることを挙げている。さらに「加えて、Sunはさまざまなベンダとアライアンスを結んでいる。このことがユーザに多くの選択肢を与えることになる」としている。より多くのプラットフォームにおいてMySQLがサポートされるようになれば、ユーザ企業にとってもhappyに違いない、というわけだ。

Happy or unhappy?の答えは…

その他、本インタビューはOracleとの今後の関係や、他のプラットフォームについての話が掲載されている。その中でも印象的なのは、OracleのCharles Phillipsが「Oracleがボーイング747なら、MySQLはトヨタの車みたいなもの」と表したエピソードについて、Mikosが「このアナロジーはとてもイイね!」と大喜びしているところである。「世の中にはたしかにジャンボジェットは必要。でも現在では自動車のほうがもっと必要とされているからね」と悦に入っている。このあたりを素直に喜ぶのがMikosらしい。

Sunの前CEOであるScott McNealyは自身のホッケーチームをもっていて、そのメンバーでもあった。ホッケーの練習中のあるとき、いち社員から1つの言語についてのアイディアを聞かされた。数年後、その言語がのちのJavaと発展したことは有名な話である。業績の浮き沈みがわりと激しい同社だが、オープンなアイディアを広く採用する度量は、数あるIT企業の中でもトップクラスだろう。OSSへのコミットに深く関わるのも、いずれ自社に大きな利益をもたらすことを理解しているからだ。だからこそ、OSSの雄とも言える存在のMySQLを取り込めたことは、やはりSunにとって大きなプラス要素になるに違いない。そしておそらく、ホッケー好きのMarten MikosとMySQLにとっても。



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