米Comcastと米BitTorrentは3月27日 (現地時間)、オンラインでのリッチメディアコンテンツ配信とネットワーク帯域管理の問題解決に向けて提携することを発表した。

米大手ケーブル事業者でISPであるComcastは、昨年後半にファイル交換ネットワークの利用を意図的に制限していると指摘され、ネットの中立性を求める企業や団体などと対立していた。その背景には、BitTorrentのようなファイル交換システムの利用者がISPのトラフィックを占有しているという問題がある。ネットの中立性と帯域占有を天秤にかけたような議論が続いたが、今年1月に連邦通信委員会 (FCC) チェアマンのKevin Martin氏がISPによる帯域制御を批判し、FCCによる調査が始まったことでISP側に逆風が吹き始めた。そのような状況が、今回のComcastとBitTorrentの提携に結びついたと考えられる。

Comcastは2008年末までに、特定のプロトコルを意識しない帯域管理技術を導入する。「ネットワーク管理システムを短期間で再構成することになるが、今日のインターネットのトレンドに即した、より適切なトラフィック管理を実現できるだろう」とComcast CTOのTony Werner氏。一方、BitTorrentのCTOであるEric Klinker氏は「技術的に様々な選択肢があったと思うが、Comcastや他のISPが最初に帯域制御のような対策を採用したのは理解できる。Webがよりリッチになり、帯域への要求が増す中で、Comcastがトラフィック傾向の変化を理解し、インターネットコミュニティが透明と思える技術を、われわれと共に採用することをうれしく思う」と述べる。

Comcastは、2008年にDOCSIS 3.0の展開を押し進め、年内に契約世帯の最大20%をサービス対象とする目標を立てている。さらに主要市場で一般家庭向け接続サービスの上り容量を倍増させるなど帯域拡大に努める。その上で同社はBitTorrentと共に、他のISPやテクノロジ企業、Internet Engineering Task Force (IETF)などを巻き込み、リッチメディアコンテンツをより効率的に配信するための新しいディストリビューション・アーキテクチャの研究・開発を推進する。

「合法的なコンテンツ配信が十分に可能なほどにP2P技術が成熟したと、われわれは評価しており、ネットワーク全体を変えるテクニックとして、P2P技術をサポートできるアーキテクチャが必要だと考えている」とComcastのWerner氏は述べる。