IPTVのサービス拡大競争が活発になってきている。そんな中、大手2社のKTとHanaro Telecom(以下、Hanaro)は、大規模なコンテンツ確保に動いた。

教育に集中するKT

IPTVサービスの「Mega TV」を提供しているKTでは、韓国の教育専門放送局であるEBSと提携するなどして、教育関連のコンテンツを大幅拡大した。

EBSによる、語学や教養などすべての教育コンテンツを提供するほか、EBSや語学塾などとの提携で全年齢層が利用可能なレベル別英語学習コンテンツ「TV English」や、法学塾と提携による"ロースクール"への準備プログラムを提供する「成人教育センター」などを新設した。また「放送大学TV」で提供している、1,400以上に上る多様な科目の教育コンテンツを無料で視聴可能にするなど、量・質的に大幅強化をはかった。

ちなみにロースクールというのは、韓国で2009年3月から導入される制度だ。簡単に言えば法学部などの出身でなくとも、法律界の人材を育成するカリキュラムを提供する大学院(ロースクール)に通い試験に合格すれば、弁護士などになる資格を得られるという内容で、米国の制度に倣っているという。

KTでは「これまでおもに映画やドラマなど、見て楽しむものに集中してきたが、論述や外国語、教養はもちろん、レベル別の授業が可能な教育コンテンツを集中提供することで、各家庭の教育費負担を減らす一助になるだろう」と述べている。

高度な学歴社会の韓国。幼稚園、小学校のうちから複数の塾に通うことも珍しくないほか、大学生や社会人になっても語学や専門の勉強などをやらざるを得ない社会とあって、教育コンテンツに対する需要は高い。最近は上記のロースクール制度のため、とくに社会人の学習熱が高まっている。家庭の教育費は上がるばかりだ。

KTによる教育プログラムの充実は、そんな風潮に合わせたものだといえる。IPTVであれば、残業帰りでも好きな時間に勉強できるというメリットもあるので需要は高そうだ。

コンテンツ事業に大規模投資

一方「Hana TV」を提供しているHanaroでは、コンテンツへの投資に余念がない。

同社では「ハンファ第2号デイジー文化コンテンツ投資組合」に、20億ウォンを出資すると発表した。これは映画やアニメーション、公演といった文化コンテンツ産業のために助成された、100億ウォン規模のファンドだ。

Hanaroではこれまでにも複数のコンテンツファンドに対し、数十億ウォン単位の出資を行ってきている。こうした大規模投資をするのは他でもない、差別化されたコンテンツ確保のためだ。Hanaroが参加するファンドが投資しているコンテンツは、Hanaroに対して独占的に提供するため、そこで他社との差別化ができるというわけだ。

Hanaroでは「今後のリアルタイム放送サービスに向け、優秀な文化コンテンツを確保していきたい」と述べている。

韓国でIPTVを行っているのは、KTやHanaroのほかに、通信会社のLG DACOMによる「myLG TV」、そしてポータルサイトDaumによる「OpenIPTV」がある。いずれも地上波テレビ番組などのリアルタイム放送を行っていない状態だ。それはこれまで法的な制度が整っていなかったからだ。

そこでこれを法的に可能にする「インターネット・マルチメディア・放送事業法」(IPTV法)が制定されて、今後施行令が出る予定だ。リアルタイム放送が可能になれば、これにより多くの加入者を呼び込むことができると見られている。そのため各社ではその時に向け、今から準備をしているというわけだ。

大手2社が目立った動きを見せてきているので、他2社もこれに伴ってコンテンツ確保のための戦略を実行してくることが予想される。IPTVサービスの充実につながるこうした動きは、視聴者としては大歓迎だが、IPTV業者にとっては近い将来を見越した真剣勝負といえる。