SNSの最大手であるミクシィ(mixi)は19日、4月1日から改定するとしていた新しい利用規約について、投稿した日記などの著作者人格権の不行使をユーザーに求める条文を、事実上"撤回"したと発表した。同規約発表後、「日記を勝手に商品化される」などの批判が殺到した一連の騒動は、ユーザー側の"勝利"ともいえる結果となった。

今月3日に発表された新規約で特に問題となっていたのは、第18条「日記等の情報の使用許諾等」で、以下のようなものだった。

    1. 本サービスを利用してユーザーが日記等の情報を投稿する場合には、ユーザーは弊社に対して、当該日記等の情報を日本の国内外において無償かつ非独占的に使用する権利(複製、上映、公衆送信、展示、頒布、翻訳、改変等を行うこと)を許諾するものとします。
    2. ユーザーは、弊社に対して著作者人格権を行使しないものとします。

この条文に関しては、当のミクシィのユーザーの日記でも、「ユーザーの日記をミクシィが商品化?」「規約変わりすぎ」「mixiの規約改悪に伴い、アップロードしていた動画を削除しました」「とんでもない話」など、同規約を批判する声が殺到。多くのユーザーが、ミクシィに投稿した日記などが、勝手に書籍やドラマ化されたりすることに関し、懸念を表明していた。

あまりに多く寄せられる批判の声に対し、ミクシィは5日、「利用規約の改定に関して引き続き検討をおこない、対応を進めさせていただくこととなりました」とユーザーに説明。特に18条に関しては、「ユーザーのみなさまに著作権があることの明記などについて検討しております」と修正の意向を明らかにしていた。

18日の日本経済新聞朝刊では、同社社長の笠原健治氏のインタビューの中で、「会員の日記をミクシィ側が改変できるようにすることを結局取りやめた」と報道され、同条文の"撤回"は時間の問題となっていた。

19日発表された新規約の修正版では、第18条は以下のようなものとなっている。

    1. 本サービスを利用して投稿された日記等の情報の権利(著作権および著作者人格権等の周辺権利)は、創作したユーザーに帰属します。
    2. 弊社は、ユーザーが投稿する日記等の情報を、本サービスの円滑な提供、弊社システムの構築、改良、メンテナンスに必要な範囲内で、使用することができるものとします。
    3. 弊社が前項に定める形で日記等の情報を使用するにあたっては、情報の一部又は氏名表示を省略することができるものとします。
    4. 弊社が第2項に定める形で日記等の情報を使用するにあたっては、ユーザーが設定している情報の公開の範囲を超える形ではこれを使用しません。

第1項で、修正前に最も問題となっていた、ユーザーに「著作者人格権」の不行使を求める文言を180度転換し、「著作権および著作者人格権等の周辺権利は創作したユーザーに帰属する」と明示。また、第2項と第4項では、日記などを必要な範囲で使用できるとしながら、ユーザーが設定している範囲外での使用は行わないとし、修正前はユーザーに対して「複製、上映、公衆送信、展示、頒布などを国内外で無償で使用する権利を許諾する」ことを求めていたのと比べ、大幅な変更を行っている。

前回当サイトでお伝えしたように、2004年にも、「人力検索はてな」や「はてなダイアリー」などを展開するはてなでも同じような問題が起きた。その際も、著作者人格権の不行使をユーザーに求める文言は、結局撤回されることになった。

はてなと同様、半月あまりでミクシィ側が"敗北"した原因は、まさに笠原氏が日経紙面上で述べていたように、「ネットユーザーの著作権意識の高さを見誤った」結果といえる。今回の一連の騒動は、笠原氏だけでなく、ユーザー発信型のネットサービスを展開する他の企業にとっても、大きな教訓になったことは間違いないだろう。