日本インターネットプロバイダー協会など通信関連の4団体はこのほど、動画投稿サイトやP2Pソフトの利用普及などで加速するトラフィック増大に対応するためのガイドライン案をまとめた。トラフィックや帯域を占有している客観的データの裏付けがあれば、「ヘビーユーザー」のネット利用に一定の制限を行うことなどを盛り込んでいる。

国内のインターネット回線でダウンロードされるデータ総量は加速度的に増加している(出典:総務省)

総務省の推計では、国内のインターネット回線でダウンロードされるデータ総量は、04年9月に毎秒270Gビットだったのが、07年5月には約720Gビットとなり、2年で2倍のペースで増加している。また、通信量に関しては、あるISPの場合、P2Pユーザーの上位10%が全トラフィックの60%以上を占めるなど、「ヘビーユーザー」の問題が顕在化している。

同省が2006年11月から2007年9月まで開いた「ネットワークの中立性に関する懇談会」は、こうした問題を解決するための一定のガイドラインが必要と指摘。これを受け、日本インターネットプロバイダー協会などがガイドラインの策定を行ってきた。

あるISPのデータによれば、10%のP2Pユーザーが60~90%のトラフィックを占有するといった状況が起こっている(出典:総務省)

今回示されたガイドライン案の名称は「帯域制御の運用基準に関するガイドライン案」。同協会のほか、電気通信事業者協会、テレコムサービス協会、日本ケーブルテレビ連盟の4団体が策定にあたった。

ガイドライン案ではその法的性質について、「あくまでも事業者としての行動の指針であり、これを遵守するか否かについては、個々の事業者の判断に任される」と規定。その上で、「特定のヘビーユーザーのトラフィックが他のユーザーの円滑な利用を妨げているという客観的な状況のデータがある場合は、帯域制御の実施が認められる」との基本原則を打ち出した。

ただし、帯域制御は「通信の秘密」に対する侵害行為であるため、「単に契約約款に帯域制御に同意する旨の規定を設けるだけであったり、ホームページで周知しているといっただけでは十分でない」と指摘し、新規のユーザーに対しては、契約書の帯域制御の項目を契約書に設けてユーザーの同意を必ず確認することが必要になると提言している。

また、著作権侵害で問題視されることの多いP2Pユーザーに関しても、「ISPがコンテンツの違法性を個別に判断することは不可能」とし、同ユーザーを対象に一律に帯域制御を実施することは適当でないとしている。

さらに、P2Pソフトの利用が原因で生じるセキュリティの問題への対処については、元々はユーザー自身を保護するためのものなので、P2Pソフトの利用に関して帯域制御を実施する場合は、ユーザーの希望に応じて提供されるオプションサービスであるべきだと提案している。

上記のガイドライン案については、日本インターネットプロバイダー協会のホームページなどで4月14日まで意見を募集している。