日本オラクルは、エンタープライズパフォーマンスマネジメント(EPM: 統合業績管理)戦略を発表、米オラクルが2007年6月に買収した米HyperionのBI(Business Intelligence)製品と、従来のオラクルの経営管理、分析ソリューション群を統合、企業向け統合業績管理基盤「Oracle|Hyperion Enterprise Performance Management (EPM) System」として整備、強化した。同社では、ICTの進展や国境を越えた競争の影響による経営環境の激変、さらには日本版SOX法の施行など、著しい変化への対応を求められる日本企業からの需要がさらに拡大すると見ており、国内でも推進をいっそう重点化する。

2008年4月から開始される事業年度以降、いよいよ上場企業と、その連結子会社に日本版SOX法が適用されることとなる。財務情報の透明性と正確性の確保、内部統制強化を企業に求めている。また、日本会計基準と国際会計基準との整合といった課題、事業活動別・所在地別など多様な切り口で集計したセグメント開示にみられるような決算情報の複雑化などにも、日本企業は早急な対処を迫られている。同社は、経営状況を「見える化」した上で行動することが必要条件だとしており、「Oracle|Hyperion EPM System」は、これらのような、企業の要請に応える解決策と位置づけている。

日本オラクルによれば、「Oracle|Hyperion EPM System」は、日々の業務遂行のなかで動く、表計算ソフトから、データウェアハウスに至るまでの、さまざまなITデータを、同社の「Oracle Fusion Middleware」を軸に統合化し、データを仮想的に一元管理し、加工、集計、分析するためのBIデータモデルで共通化、経営/業務の「見える化」につなげ、企業内デスクトップからモバイルまで、幅広い窓口により、経営幹部から営業、サービスの現場まで、あらゆる階層の従業員が、必要な情報を閲覧できるようにする。

「Oracle|Hyperion EPM System」で、財務連結や予算策定、買収計画などの戦略策定を支援する財務パフォーマンス管理アプリケーションは、「Hyperion Strategic Finance」「Hyperion Planning」「Hyperion Financial Management」などで構成される。

「Hyperion Strategic Finance」は、戦略的な財務モデルの構築を担うソリューションで、複数のシナリオによる、全社的な立案を支援、事業部門ごとの企業価値算出だけでなく、たとえば、買収/合併しようと考えている企業までを含めたシミュレーションにも対応しているという。

「Hyperion Planning」は、予算編成、設備投資計画に関わる領域で用いられる。予算編成と管理プロセスを統合的に捕捉し、予算編成プロセスの合理化や短縮につなげられるという。統合型分析機能により業績予測を検証できるとともに、Webインタフェースを簡素化し、使い勝手を高めている。

「Hyperion Financial Management」は、Webベースの連結経営管理用のアプリケーションで、グローバル化された経営環境での、財務報告書を収集、分析する機能を備え、決算報告のサイクルを短縮し、管理連結、制度連結の両方をサポートする。同社では「自動化により、決算処理の作業時間を短縮し、財務担当者は、付加価値の高い分析業務にさらに多くの時間を割くことができる」としている。

同社は、これらに加え、売上、収益、費用のレポート、分析などの機能をもつ「New Profitability Application」も今年度中には投入する予定だ。同社 常務執行役員 製品戦略統括本部長の三澤智光氏は「日本のBIはこれまで、仮想的に、単にデータを抽出するためのツールという側面が強かったのではないか。また、IT部門の主導で導入されることが多かった。しかし、経営環境が大きく変わるなか、ビジネスと直結したBIが求められている」と指摘、「Oracle|Hyperion EPM System」は、このような需要に応えるものであると強調した。

日本オラクル 常務執行役員 製品戦略統括本部長 三澤智光氏

米オラクル ビジネス・インテリジェンス&パフォーマンス管理担当 シニア・バイスプレジデント ジョン・コプキ氏

また、同社では「Oracle|Hyperion EPM System」の裾野を広げることを図り、これら製品群の知識取得や技術習得のための研修コースを実施し、導入技術者の育成支援にも積極的に取り組んでいく方針で、2008年5月には、財務パフォーマンス管理の関連製品群「Hyperion Essbase」「Hyperion Planning」「Hyperion Financial Management」について、認定資格制度の提供を開始する予定だ。

2007年には、企業向けのIT市場でのBIの重要性が一段と向上し、同社をはじめ、独SAP、米IBMなど、有力事業者が軒並み、BI専業ベンダを買収した。これら各社は、今年に入り、経営統合の成果としてのBI製品体系を整えようとしており、単にBIというより、正にEPMという役割が争点として浮上してきており、この分野での競合は激しさを増している。米Oracle ビジネス・インテリジェンス&パフォーマンス管理担当 シニア・バイスプレジデントのジョン・コプキ氏は「オラクルのEPMは、オラクル以外のプラットフォームにも対応している。また、競合に比べ、ビジネスプロセス統合の点でも進んでいる」と述べ、強い自信を示した。