マイクロソフトら12の団体・企業が2006年12月から実施してきた「IT経営キャラバン隊」が2月をもって終了する(3月の沖縄でのイベントを除く)。中小企業のIT導入を促進する目的で全国を回る巡回イベントだったが、フィナーレを前に、マイクロソフトが1年あまりの活動を振り返り、成果を紹介した。

マイクロソフト業務執行役員 Plan-J推進本部長の秋本則政氏

同社では5年ほど前にも同様の目的で大規模な巡回イベント「IT体験キャラバン」を行っていた(2002年10月~2003年12月)。同社業務執行役員でPlan-J推進本部長の秋本則政氏は、当時と今回のキャラバンを比較して「中小企業におけるIT活用は依然として進んでいないが、ITの必要性は既に深く浸透しており、もはや『啓発』という段階ではない。具体的にどうやって導入、活用するかというフェーズに入っている」と話す。前回はITの有用性を説いて回っていたが、このIT経営キャラバン隊では、IT化の波に乗り遅れまいとする危機感や、IT導入で生産性向上を図れるのではないかといった思いが、参加者の側に既にあったのが大きな違いだったという。

キャラバン隊はITコーディネータ協会、日本商工会議所、マイクロソフトなどが中心となった任意団体で、経済産業省、総務省、国土交通省からも後援を得ている。イベントの主な内容は、キャラバン用のマイクロバス「チャレンジ号」とテントを会場として利用した、最新製品の体験コーナー、経営に関するセミナー、IT導入の相談コーナーなどで、全国41都道府県で120回を開催し、延べ約22,000名が参加した。

キャラバン隊は12の企業・団体から構成され、1年以上にわたって活動を行ってきた(なお、マイクロソフトではこのキャラバンとは別途、バス「マイクロソフト号」を使った「全国IT実践キャラバン」を今年6月末までの予定で実施している)

マイクロソフトJ-LIFEチャネルマーケティング部長の白水公康氏

同社J-LIFEチャネルマーケティング部長の白水公康氏は、企業や団体が主催するIT関連のセミナーの多くが主要都市を会場としているのに対し、「今回は我々が足を運んで直接地域の方々とお話をさせていただけたというのが大きな成果だった」と話す。参加者の業種は製造、建設、農業、飲食店などさまざまだが、ほとんどは既にPCと最低限のインターネット接続環境を有していたという。ただし、表計算ソフト程度は使っておりメールも送受信できる(ただし日常的にチェックしておらず通常は電話とFAXなど)が、それ以上となると活用法がわからないということが多く、例えばWebサービスを利用した情報の発信や共有といった事例や、広告や資料の作成でビジネスマンでなくてもプレゼンテーションソフトを使う機会があるといったヒントを紹介することで、「ITを経営に役立てる」という具体的なイメージを提示することができたとしている。

セミナーや体験イベントもさることながら、地元の商工会議所、ITベンダー、資格を持ったITコーディネータの三者を、キャラバンの実施を通じて引き合わせることができたのも大きな成果だという。中小企業がIT導入を図ろうと思っても、経営戦略の観点で相談できる地元の窓口が見つからず、ベンダーに言われるままシステムを購入したが十分活用できていないという例はままある。また、ITと経営の知識を活かして地元企業を支援したいと考え資格を取得したが、なかなか顧客にめぐりあえないという独立系のITコーディネータも地方では多い。

今回のキャラバンでは、各地での開催にあたって日本商工会議所とITコーディネータ協会が中心となり、地場のベンダーやITコーディネータに声をかけながら準備をすすめたため、関係者が商工会議所やイベントの場を通じてコミュニケーションの機会を得ることができた。効果的なITソリューションを求める経営者、製品を売りたいベンダー、そのマッチングを行うコーディネータが、それぞれ同じ地域にありながらお互いの顔が見えていなかった、という状況を、キャラバンの開催によって改善できたのではないかと白水氏は見る。

「キャラバン号」を使った巡回イベントはこれで終了となるが、このノウハウを活かすことで、各地域が主体的に地場のIT導入を推進していけるようになることが期待されている。実際にキャラバン開催以降、IT導入支援のため商工会議所が窓口となってITコーディネータを派遣するといった取り組みを行っている地域もあるといい、今後は「地元による地元のためのIT」がより求められていくことになる。