上場企業の有価証券報告書や株式を5%以上保有した場合に提出される大量保有報告書を無料で閲覧できる金融庁のインターネットサイト「EDINET」に、トヨタ自動車など6社の株を51%取得したとする"虚偽"の大量保有報告書が掲載され続けている問題で、同庁はこのほど、同様の虚偽記載がある場合は削除できるよう、金融商品取引法の改正案を今国会に提出する方針を固めた。

「EDINET」のトップページ画面。テラメントに訂正報告書を提出するよう求めたことが記載されているが、法律上の規定がないため、同社が提出した虚偽報告書は掲載され続けている

問題の大量保有報告書は、川崎市のテラメントが今年1月25日に提出。同報告書では、昨年12月10日、トヨタ自動車、フジテレビジョン、三菱重工業、ソニー、日本電信電話(NTT)、アステラス製薬の6社について、「発行株式の51%を取得いたしましたのでご報告申しあげます」とし、これらの企業の株の過半数を取得したと報告している。

これに対し金融庁は同月27日、「各報告書に記載された内容の株券の取得の事実がない」として、金融商品取引法の「重要な事項についての虚偽の記載」に当たるとし、テラメントに対し、上記大量保有報告書の訂正報告書の提出を命じる行政処分を行った。

だが、金融商品取引法には、EDINETでの虚偽記載に関し、虚偽記載と判明すれば5年以下の懲役または500万円以下の罰金を課す罰則はあるものの、虚偽の報告書をEDINETから削除する規定はない。また、訂正報告書が提出されても、EDINETに訂正報告書は掲載されるが、虚偽の報告書もそのまま掲載され続けることとなり、閲覧者を混乱させる恐れも否定できない。

こうした状況を受け、同庁では、2月1日に再発防止策や危機管理策を検討するため、実務者を中心とした検討チームを立ち上げ、計4回にわたり議論。議論の結果を受け同チームは19日、「EDINT運用改善に関する論点整理」をとりまとめた。

まず、システムによるチェック機能の強化策として、現行のテキスト形式から、論理チェックを用いたシステム上の抽出が可能となる方式に変更し、詳しい調査が必要な報告書を自動的に検出できるようにする。また、大量保有報告書に取扱金融商品取引業者などの名称の記載を求めることで、証券会社や信託銀行への照会が迅速に行われるようにした上で、虚偽記載の疑いがある報告書を検出した場合、必要に応じ売買停止措置を講じることも想定されるため、証券取引所などとの連携を強化する。

また、訂正報告書の提出命令をする場合は、該当する開示書類をEDINETから例外的に削除する規定を金融商品取引法に盛り込むとしている。

同庁では、「とりまとめ案で法律上改正しなければいけない部分は、金融商品取引法の改正案として今国会に提出する方針」とし、虚偽記載が確定した場合には、EDINETから削除が可能となる方向で検討している。