あとは政府の認可をまつのみ

既報のとおり、携帯電話事業者のSK Telecom(以下、SKT)が、ブロードバンドや電話事業などを行う、通信会社のHanaro Telecom(以下、Hanaro)を買収する可能性が高まっている。

その後話は順調に進み、SKTは12月3日、Hanaroの9,140万6,249株(38.89%)を、買収する契約を結んだと発表した。総売却額は1兆877億ウォン(約1307億2920万円/1円=0.1201ウォン)に達する。これによりSKTはHanaroの持分を43.59%に増やして大株主になる。

ただし、まだ買収作業が進められると決まったわけではない。担当政府機関からの許可が必要となるのだ。この許可を得てはじめてHanaroを買収できるわけだが、政府がこの買収を許可する可能性は大変高い、というのが大方の見方だ。

もしSKTがHanaroを買収すれば、携帯電話市場で1位(占有率51.2%)の企業と、固定ブロードバンド回線市場で2位(占有率25.2%)の企業(いずれも2007年10月末時点のデータ。情報通信部資料による)が一緒になるということでもあり、通信会社としては大変大きな勢力になることが予想される。

SKTでは今後の方向性について「有線/無線連動サービスを開発するなど、国内で蓄積されたコンバージェンス分野に関するノウハウを基盤として、世界進出の新しいビジネスモデルを開拓する」と述べている。

ライバル4社が大反対

しかし、これに大反対しているのが競合各社だ。携帯電話業者のLG Telecom(以下、LGT)とKTF、通信会社のLG DACOMとLG Powercomの4社は「SKTのHanaro買収により、問題が発生する可能性がある」と公式文書を通じて発表した。

4社の言う"問題"とは、下記3つだ。

  1. 貴重な周波数である800MHz帯域を独占的に利用し、莫大な利潤を得ているSKTが、市場での独占的な地位を利用して、韓国の通信市場を人為的に再編しようとしている

  2. 携帯電話市場で築いた独占的地位および莫大な資金力が、固定回線市場にも転移するのと同時に、両社の商品をセットにした商法や流通網を通じて、いっそう独占状態を強める

  3. SKTが市場支配力をより強固にすることで、公正競争の根幹を根こそぎ崩すのはもちろん、支配的立場を利用してユーザーの利益を減ずる

ただでさえ市場を独占しているSKTがHanaroを取り込むことで、独占状態はいっそう強まることになる、という部分に4社が抗議する理由がある。SKTの独占状態が強まれば、4社には死活問題にも発展しかねない。

こうした事態に対してどうすれば良いのか、ということについても4社は提言している。

まずは、SKTがHanaroを買収することで競争力が偏ることや利用者の利益を低減することに対し、事前に措置を講じておくこと。そして、韓国政府の情報通信部と公正取引委員会が話し合いを通じて、利用者の利益を促進し、公正競争できる環境を保つようSKTに求めること。そして通信市場や競争力のバランスを保つため、政府は適切な認可条件をSKTに付与し、競争活性化のための措置をとること。この3つを遂行してほしいというのが、4社の主張する希望だ。

4社では「今後の買収過程を見守ったうえで、場合によっては共同で対応していく」意思を明らかにしている。

通信2強の時代到来か

ところで4社の中に含まれているKTFは、親会社に通信会社のKTを持つ。KTの固定ブロードバンドの市場占有率は44.5%と韓国1位、KTFの市場占有率は31.0%で市場2位となる。これまでSKTは固定回線を持たなかったため、KT勢力に対抗するためにはどうしてもHanaroの存在が欲しかったところと言えよう。ちなみにLGTの市場占有率は17.8%、LG DACOMやLG Powercomは両社の占有率を合わせても11.6%程度にしかならない。

ということは買収が実現すれば、韓国の通信市場はほぼ2強体制になるということだ。おりしも、これまで市場で独占的な立場にある企業に対しては「結合販売」が禁止されていたが、2007年夏から制度が変わって許可されるようになったばかりだ。結合販売とは、携帯電話と固定電話、ブロードバンドと固定電話といったように、異なる通信商品をセット販売することを指す。こうした制度変更は、大規模通信企業には大きな追い風となっている。

この追い風に乗ってSKTがHanaroを順調に買収するのか、あるいは何らかの規制が設けられるのか、今後の政府の決定に注目が集まっている。