Samsung電子の副会長のユン・ジョンヨン氏

Samsung電子の副会長であるユン・ジョンヨン氏は12月の月例挨拶で、2007年の電子事業を省みると同時に、未来の展望について説明した。

同氏は2007年の電子産業について「発想の転換により新しい顧客層を発掘し、融複合を通じて使用性を改善した製品が、ヒット商品として名前を連ねた。またインターネットに簡単につなげる、新しい概念の製品が販売された」と分析した。

この代表的な製品として挙げたのが、任天堂の「Wii」といったゲーム機とAppleの「iPhone」だ。同氏は、前者について「ゲーム機の主要顧客が20 - 30代という固定観念を破り、中年層や女性でも楽しめるゲーム機を作り、世界市場で1位にのし上がった」という点を、後者は「UIや高級感あるデザイン、インターネット機能を持つ携帯電話を販売することで世界の注目を集めた」という点を、それぞれ評価している。

ユン氏はここから、将来の方向性として「製品間の融/統合化とネットワーク化、電子製品の新しい用途発掘が急速に進み、電子産業ではない他の産業まで活用が拡大するだろう」と述べている。

こうした目標を受け、同社では具体的にどういった事業計画を立てているのだろうか。それは11月28日に開催された「2007 Samsung Tech Forum」で触れられている。

プリンタとシステムLSIに注力

年に1回開催されるSamsung Tech Forumでは、同社の今後の方向性などが示されるほか、数百人以上の投資者やアナリスト、専門家など数百人を招いての討議が行われる。

Samsung電子ではこの席で、今後の成長動力として「プリンタとシステムLSI」(Samsung電子)をとくに強調していた。同社によると「エネルギーやバイオ、環境といった分野でも、新事業の発掘に多くの努力を傾けている」とし、ITに留まらない包括的な発展の方向性を示した。

プリンタとシステムLSIに注力するのは、市場拡大の見込みが大きいためだ。プリンタに関しては、2012年までにこの分野のリーディング企業になるとの目標を立てている。ハード販売とともに消耗品のソリューションなど、総合的なサービスを提供していく考えだ。当初は利益率の高いB2B市場から開始。その後B2C市場に、デザイン性や小型化、低騒音化などの特徴を持たせた製品で攻略していきたい考えだ。

またシステムLSIに関しても、企業買収などを通じての積極的な製品開発など、攻撃的な姿勢を見せている。現在同社ではこの分野で、世界14位程度の水準ではあるが、10年以内を目処に上位につけたいとの目標を持つ。

このほか同社の核心事業の1つである携帯電話に関しては、2008年に2億台以上を売り上げることで、世界での市場占有率を20%にまで引き上げたい考えだ。

Samsung電子といえば昨今、Giorgio ArmaniやBang&Olufsenなど有名ブランドと提携したプレミアム携帯電話の販売が相次いでいるが、こうした高級路線も維持すると同時に、拡大する新興市場にも注力する。同市場には中・低価格帯の携帯電話を投入することで、占有率の上昇を狙う。

またLCD部門では、46インチ以上の大型パネルに注力する方針だ。これに関して最近同社は、8世代生産ラインへの追加投資を決定。SONYと共同運営されている8-1ラインのPhase 1のほかに、2008年の後半から独自に運営を行う8-1ラインPhase 2を増設する予定であるなど、より効率的にパネルを生産できるべく設備投資を惜しまない予定だ。

常に最新の技術を提供して、市場の先端に位置するというのが、Samsung電子のスタンスだ。こうした最新技術を基盤に、前述の通りユン氏が示したような、融・統合製品(サービス)や任天堂のゲーム機のような発想の転換が必要な製品が、どのように生み出されるのか、2008年のSamsung電子の動きに注目したい。