NECは26日、企業のIT基盤で使用される電力をできるだけ抑えるための技術、製品、サービスの開発、提供についての計画/活動として「REAL IT COOL PROJECT」を策定、2012年までに、企業顧客のIT基盤の消費電力を2007年比で年間50%、IT機器の二酸化炭素排出量を同じく約91万トン削減することを目指す。「REAL IT PROJECT」では、省電力を3つの観点から推進する考えで、ハード面の「省電力プラットフォーム」、ソフト面の「省電力ソフトウェア」、設備面の「省電力ファシリティサービス」を基本としている。

「省電力プラットフォーム」では、CPU、メモリ、ディスク装置などの省電力コンポーネントを採用、仮想化技術を応用することで、サーバ、データストレージなどを省電力化する。同社では、この計画の具現化のひとつとして、新たな省電力サーバ「ECO CECTER(開発コード名)」を2007年度末に製品化する。このサーバは、高さ2mの19インチラックマウント筐体に500コアを収容している。電源、冷却実装の最適化による部品点数の削減、高効率電源や半導体ディスクの採用、直流電源のサポートなどにより、従来製品と比べ、設置スペースを最大75%、コアあたりの消費電力を同60%削減するとともに、同じく60%の軽量化を果たした。同社によれば、これによりフロア代、電力などのファシリティコストは年間60%削減できるという。

これらのほか、SANストレージで最大31%の消費電力削減、バックアップストレージでは、通常のディスクToディスクのバックアップ装置に対し77%の省電力化を実現するなど、ハードの省電力化に、さまざまな角度から取り組んでいく方針だ。

2012年までに企業のIT基盤の消費電力を2007年比で年間50%、IT機器のCO2排出量を約91万トン削減

省電力制御ソフトウェアでは、プラットフォーム管理ソフト「WebSAM SigmaSystemCenter」、統合管理ソフト「WebSAM MCOperations」により、以下のような技術を実現している。指定の範囲で総消費電力の限界を設定、許容量の超過を防ぐ。これは2008年度上期に導入される。SLAで使用電力量を定め、業務の優先度に応じ、必要以上の電力を与えない。こちらは同下期に導入される。また、「VMware Infrastructure 3」の仮想マシンを用い、2008年1月には余剰サーバの自律電源OFF運用が実現する。CPUの使用率を監視、全体的に適正な負荷を維持するよう、負荷状況を計測、サーバ資源を再配置し、その結果、余剰とされたサーバは電源が切られるしくみだ。

省電力ファシリティサービスでは、データセンターやサーバなどが設置してある場所の空調設備などの付帯設備を対象に、消費電力の低減化、省エネ運用を図る各種サービスを提供するもので、2008年1月からNECフィールディングが「設計・構築サービス」として開始する予定だ。

同サービスで用意している「熱シミュレーションサービス」では、機器配置、空調条件を変えたシミュレーションを行い、その結果により、有効なな策を講じる。たとえば、空調機の風向きを改善することで、室内の熱が滞留する箇所を解消したり、ラックの配列を変更することにより、室温を下げるといった効果が得られるという。同社の想定したモデルケースでは、空調電力20%、電気代年間約300万円削減できる。

2009年度に提供する予定の省電力監視・運用サービスでは、IT機器稼働状況、温度、湿度などの環境情報を24時間、365日、監視し、得られた情報を分析、定期的に報告、電源、空調設備、機器配置、稼動スケジュールといった点での改善につながる提案をする。

同社では、2002年度から「IT、で、エコ」との環境経営コンセプトを打ち出しており、ITと環境との調和のとれた「環境経営」を推進しており、IT機器の省電力化により、二酸化炭素排出量をいっそう削減していく意向で、2010年度には実質的に排出ゼロを目指している。これまでにも、環境配慮型製品への取り組みを継続してきたが、2005年に、京都議定書が発効、地球温暖化問題への関心が高まり、来年度以降、企業、官公庁で、二酸化炭素排出量削減が経営指標、目標などとして扱われる可能性も大きくなっている。今回は特に省電力を焦点として、それらの活動をさらに強化、前進させる。

NEC執行役員常務の丸山好一氏

同社執行役員常務の丸山好一氏は「このようなプロジェクトは、外資系、国内企業数社でいくつか発表されているが、これら各社はコンセプトが中心だが、当社は、省電力などの取り組みとともに、具体的な製品やサービスの提供まで含めており、一歩進んでいると考えている。省電力や省エネといった要因は、これまでほとんどサーバなどの調達の条件としては、プライオリティが高くなかった。しかし今後、各企業内でも二酸化炭素削減の割り当てがされるようになる。確実に二酸化炭素削減が見込めるIT機器が、より選択されるようになる。また、総使用電力を抑制しないと、ファシリティコストが高くなり、今後、省電力、省エネへの対応は重要なポイントとして浮上してくる」と話す。