ソニー 執行役EVP兼CFO 大根田伸行

ソニーは2007年度第2四半期(2007年7-9月期)の連結決算を発表した。売上高は対前年同期比12.3%増の2兆830億円、営業利益は905億円(前年同期は208億円の損失)、税引前利益は879億円(同261億円の損失)、当期純利益は同43倍の737億円で、同社の中核事業であるエレクトロニクス分野は、デジタルカメラ、パソコンなどが好調に推移、売上高は同20.7%増、営業利益は13.36倍に伸長、増収増益に貢献した。さらに、旧本社跡地の一部売却益が607億円に上ったことなども、営業利益を大きく押し上げる一因となった。

同社はこの実績を受け、今年度の業績予想を上方修正、売上高は8兆7,800億円(7月時点での見通し)を8兆9,800億円に、営業利益は4,400億円(同)を4,500億円に、税引前利益は4,200億円(同)を5,000億円に、当期純利益は3,200億円(同)を3,300億円に見直した。

エレクトロニクス分野の売上高は同20.7%増の1兆6,631億円、営業利益は同13倍の1,069億円となった。この分野の営業利益率は、前年同期の0.6%が6.4%に跳ね上がった。液晶テレビ「BRAVIA」、デジタルカメラ「サイバーショット」、パソコン「VAIO」は増収となり、サイバーショット、VAIOとともに、PS3向け半導体の売上げが増加したシステムLSIも増益となった。一方、液晶リアプロジェクションテレビは、市場規模が縮小したこととともに価格下落により減収、減益だった。

エレクトロニクスは活性を取り戻してきた

同分野では、営業利益が大きく増加しているが、前年同期には、同社製のリチウムイオン電池セルを用いたノートパソコン用電池パックの不具合が発生、その回収費用として、512億円の引き当てを行った。今期はこのような負の要因がなかったことと、米ドル、ユーロに対する為替差益があったことも寄与している。

エレクトロニクス分野の中核であるテレビ事業は、売上高は同20%増の3,070億円だったものの、営業損益は210億円の損失となり、前年同期に比べ、赤字幅は110億円拡大した。同社の大根田伸行執行役EVP兼CFOは「液晶テレビは、この上期には残念ながら、商品の競争力が乏しくなり、想定よりかなり悪かった」と話す。その理由は「今回劣っていた点は、フルHD製品の導入だった。他社は、相当早く商品を投入していた。当社は、明らかにラインアップを間違えた。結果的に商品力が低下、価格対応につながった。欧州では、ハイディフィニションの放送はあまりなかったため、フルHD商品は秋の投入で間に合うとみていたが、実際の放送を待たず、ハイディフィニションの映像を求めた層が、フルHD製品に流れた」。今年度の冬商戦については「液晶テレビの秋モデルでは、フルHD製品を投入、北米では、すでにシェアが数ポイント上昇している。秋からクリスマスの商戦期にはかなり期待できる」(大根田執行役)とみている。

一方、液晶リアプロジェクションテレビは「市場が縮小している。1年前、米国では、全体の40%ほどだったが、PDPの攻勢などに押され、今では17-18%くらいになった。価格も下落しており、かなり厳しい。今回、通期の販売見込みを70万台から40万台に修正した」(同)が、いまのところ撤退などはない。ただ、2008年度以降、どう扱うかについては「ノーコメント」としている。

ゲーム分野は、売上高が同42.9%増の2,434億円だったが、営業損益は967億円の損失で、赤字幅が532億円拡大した。2006年度下半期に発売した、プレイステーション3(PS3)は、この四半期、売上げ台数が131万台となり、同分野の売上げ増に貢献したが、依然、製造原価が価格を上回る、いわゆる逆ザヤ状況が続いているほか、PS3関連の在庫についての評価損が増加、赤字からの脱却ができなかった。

PS3苦戦で、ゲーム分野は厳しい状況

ソニー IR部統括部長 園田達幸

ハードの状況をみると、プレイステーション2(PS2)の売上げ台数は328万台(前年同期比13万台減)、プレイステーション・ポータブル(PSP)は258万台(同56万台増)だった。PSPは「日、米、欧で薄型の新製品が好調」(園田達幸IR部統括部長)で、売上げ予想を900万台から1,000万台に引き上げた。ソフトウェアは、PS2用が3,800万本(同920万本減)、PSP用は1,260万本(同60万本減)、PS3用は1,030万本で、全体で減収となった。

PS3は未だ苦しい。同社は、PS2との互換性をなくして低価格化した製品の発売を発表したほか、既存製品も値下げしている。ソフトメーカーも離れているのでは、との声もあるが、大根田氏は「ソフトメーカーへのサポートの仕方が若干弱かった。SCE(ソニー・コンピュータエンタテインメント)はサポートを積極化している。他のプラットフォームにソフトメーカーが流れているかといえば、必ずしもそうではなく、PS3だけでなく、他にも対応するということだと理解している」と話した。今年度通期の売上げ台数見込みは1,100万台で、これは変えてはいないが、「台数は若干下になるかもしれない。1,000万台をきるというようなことではないが」(同)との可能性に言及した。ゲーム事業全体の「今期の黒字化は無理だが、2008年度、PS3はかなり改善できるとみており、(ゲーム事業の)黒字化は達成できるだろう」としている。