既報のとおり、独立系投資会社の米Bain Capital Partners(Bain)は、米国で教育機関や政府部門など公共分野を得意とするネットワーク機器メーカー3Com Corporation(3Com)との間で総額22億ドルの買収契約を締結した。この買収によって、中国の通信事業者、Huawei Technologies(華為技術)が香港に所有する100%出資子会社が3Comの株式の一部を取得した。

この案件に対するHuaweiの公式コメントは、いまのところ同社CEOの任正非氏による「これは当社が事業を強化するための投資の一環。新たなオーナーシップの下、3Comがユーザーにより優れた製品とサービス、より高い顧客満足度を提供してくれると信じている」との発言にとどまっている。だが、賽迪網(CCID)など多くのメディアでは、さまざまな憶測が飛び交っている。

まず、Huaweiは公式発表をしていないが、取得した3Comの株式比率を20%と報道した外国メディアがある一方、ある中国国内の大手ポータルサイトは、Huaweiスポークスマンから聞いた話として16.5%と報道した。

また、米国国防省が3Comのユーザーであることから、国家安全保障の立場から、米国政府がこの買収を承認しないのではないかとの見方もある。あるメディアは、米国司法省の元高官の話として、「米国政府のITシステムに関係する米国企業と中国企業との資本取引には、仮に中国企業の出資比率が低い割合にとどまるとしても、(外国企業による米国企業の買収を審査する米国の政府機関である)対米外国投資委員会(CFIUS)が強い関心を持つだろう」としている。

3Comへの資本参加がHuaweiにとって重要な意味を持つであろうことは、業界内外の次のような見方から意見が一致している。第1に、Huaweiの米国市場進出により、同国に強固な橋頭堡ができる。第2に、株主になることによって3Comに対して発言権を持ち、これまで一部市場で存在した両社の競合関係を、より容易にコントロールできるようになる。第3に、国際市場におけるHuaweiの存在感がこれまで以上に高められ、その国際戦略が加速されることになる。これらの見方が裏付けられるか、今後のHuaweiの出方が注目される。