韓国では、若者を中心としたゲームなどを楽しむ場所として、今や「PC房」がない街はないと言えるほどたくさん存在している。「PC房」とは、日本でいうインターネットカフェに当たる。このPC房だが、競争が激しい分野でもあるため、最近ではゲームやインターネット以外のユニークなサービスで、他店と差別化を図ろうとする動きが目立っている。

PC房で宅配から携帯電話購入まで

フランチャイズのPC房「CYBER Park」を運営しているVALUE SPACEは、プリンタインクの補充から宅配受付、携帯電話販売や旅行商品販売など、従来のPC房にはなかった多様なサービスを提供すると発表した。

CYBER Parkは韓国国内に407店舗を展開する大型フランチャイズである。こうした広いネットワークを生かして、単にゲームやインターネットを楽しむだけではなく、生活空間としてのPC房を提案していく方針だ。

同社ではPC房の中に休憩できるカフェを併設するなど、これまでにも新しいサービス開発に積極的だった。今回は実用的なサービスを提供することで、さらなる集客および収益の増加を狙う。

ゲームやインターネットなど遊び用途で行く人の多いPC房だが、今後は実用用途で訪問する顧客が増えるかもしれない。

インテリアもおしゃれに

370の加盟店を持つフランチャイズのPC房「Zone & Zone」を運営するFirstantは、インテリアに力を入れる。特に2007年に5周年を迎えた同社では、これを記念して9月から新しく「New Modern」と称するインテリアデザインを取り入れた。

PC房「Zone & Zone」を運営するFirstantが取り入れたインテリアデザイン「New Modern」

デザイン研究所まで自社で保有するという同社では、これまでにも「Modern」「Antique」と呼ぶインテリアデザインを展開し、店内の雰囲気作りに力を入れてきた。PC房のなかには暗くて狭い空間に煙草の煙が立ち込めるなど、特に女性が1人では入りにくいような店舗もあるが、Firstantではこうしたイメージから脱出できるよう、明るい雰囲気作りに注力している。

同社によると、今回のNew Modernは「最近のインテリアトレンドに合わせてアップグレートしたモデル」。具体的には、「ブルーとグリーントーンという2つのカラーの、さわやかで落ち着いた雰囲気により、利用客の目の疲労をやわらげて居心地よさを演出する」という。

また、同社のデザイン研究所で開発した幾何学的なグラフィック展示物やアート造形物も配置している。まるでギャラリーにいるかのようなおしゃれな空間を演出し、女性や若者が気軽に集まれるようなPC房に変貌するための努力が続けられている。

交通カードで決済

全国に展開するPC房と提携し、自社の収益を拡大しようとする動きも盛んだ。

韓国Smart Cardと、ゲームメーカーのWEBZEN、クレジットカードの情報処理業者であるFirst Data International Koreaは、PC房における「T-Money」決済事業に関し提携を行った。

T-Moneyというのは、ソウル市とその近郊を走る地下鉄やバスに乗車する際に利用できるプリペイド式カードだ。あらかじめカードに入金しておけば、あとは交通機関を利用するたびに運賃が引き落とされる。カードに入れた金額がなくなったら、また入金すれば利用できるようになるという仕組みだ。財布から現金を出し入れしなくても支払いできる便利さから、最近ではコンビニや自販機での支払いや公共施設の入場料、募金などにもその利用領域を広げている。

今回の提携は、これまでおもに現金計算が多かったPC房の決済を、T-Moneyで行えるようにするものだ。これによりPC房でやり取りされる金額の透明化が図れるだけでなく、顧客にとっては決済がより楽になるというメリットがある。

また今回の提携を通じてWEBZENでは、自社のゲーム利用客を対象にしたT-Moneyメンバーシップカードを発行。PC房の主要顧客であるゲーマーたちにT-Money決済をアピールする。

PC房におけるT-Money決済は、試験サービスを経た後12月から本格的に開始される予定となっている。韓国Smart Cardでは、2007年内にT-Moneyが利用可能なPC房を1,500カ所に、2008年内には4,000カ所までに拡大したいとしている。

これまではPCのスペックやネットワークスピードの速さなどが最大のセールスポイントだったPC房だが、それが当たり前となり競争も激化している今、プラスアルファのサービスや店の雰囲気などが勝敗を決めるポイントとなってきている。こうした変化は最近盛んになってき始めたものであり、PC房はまだまだ進化の途中といえる。