携帯電話の高性能化、スマートフォンの普及、PDAをはじめとする高性能ガジェットの普及などの要因により、すでにインターネットへのアクセスの大部分はデスクトップからではなくモバイルデバイスからになっている。しかもデスクトップとモバイルデバイスのアクセス差は開き続けており、今後さらにモバイルデバイスからのインターネットへの接続割合が増えるとみられている。特にiPhoneやiPod touchの登場がユーザやデベロッパに与えた影響は大きく、モバイルデバイスにおけるフルブラウザへの要求は止められないところにきている。
MozillaベースのWebブラウザはすでにNokia N800向けに提供されているが、Mozillaは次のステップへ歩もうとしているようだ。9日(米国時間)、Mozilla, Vice president of engineering, Mike Schroepfer氏は自身のブログにおいてモバイルデバイス向けにMozillaプラットフォームを展開していく旨を公表した。これはMozillaの今後の方向性を示すものとして極めて興味深い。
Firefoxは、デフォルトでPCにインストールされているという類のWebブラウザとは言い難い。ユーザがチョイスし、ダウンロードして使っているという、いわば選択される方のWebブラウザだ。同氏は同様の選択肢をモバイルデバイスに対しても提供しようとしている。
Firefoxではすでに多くのデベロッパやコミュニティを確保している。モバイルデバイスでFirefoxが動作するようになるということは、エクステンションやXULアプリケーションがモバイルデバイスへも提供されることを意味している。デスクトップ上でFirefoxをカスタマイズして利用しているユーザにとってはうれしい知らせだろう。
また、Firefoxがモバイルデバイス向けに提供されれば、デバイスメーカもさまざまな利益を享受できるはずだ。Firefoxはオープンソースソフトウェアであるため、デバイスメーカは自社デバイス向けにカスタマイズすることが可能になるうえ、これまでの開発によって積み重ねられてきた多くの成果がそのまま得られる。
また同氏はこれまでの経験から、モバイルデバイスとデスクトップという、特徴が異なる2つのプラットフォームにおいて開発を進めることは、双方に対して利益があるとみているようだ。モバイルデバイス向けに開発された成果物がデスクトップ向けに展開されることも考えられるため、デスクトップユーザの利便性も高まるはずだ。
Mobile Firefoxを開発するにあたって、既存のモバイル向けWebブラウザのように新しくWebブラウザを開発するわけではないという。同じベースコードからFirefoxとMobile Firefoxを提供していくようだ。
以前のモバイルデバイスでは性能上の制限が強く、専用のWebブラウザを新しく開発する必要があった。しかし最近のモバイルデバイスは性能が向上している。モバイル向けに改善を加えればFirefoxでも動作できるレベルまで水準が向上しつつある。たとえばiPhoneは128MBのメモリと400MHz~600MHzのプロセッサを備えている。
当然、現段階でもまだFirefoxを実行する環境としては十分ではない。しかしモバイルプロセッサの開発は急速に進んでおり、同氏は数年の間にそのギャップは狭まるとみているようだ。実際、1つのダイにプロセッサ、グラフィック、IO、無線処理を組み込んだチップの開発が進められている現状や、モバイルデバイスの普及を見る限り、性能については同氏の希望どおりになりそうだ。つまり、この時期でのモバイルデバイスへの進出が、Firefoxにとっても、ユーザにとっても、メーカにとっても、適切なタイミングだということだ。
同氏は同ブログにおいて、Firefox 3以降でモバイルデバイスへ注力したMobile Firefoxを提供していくとしている。まだ、どのデバイスを対象とするかは決めていないようだが、まずモバイルデバイスをMozilla2におけるファーストクラス/ティア1プラットフォームセットに追加することで、コアプラットフォームの意思決定にモバイルデバイスを加える方針のようだ。
また具体的には、モバイル向けの開発に注力しているチームにChristian Sejersen氏とBrad Lassey氏という、モバイル向けWebブラウザの開発にとって重要になるとみられる人材を追加するとしている。
どのようなデバイスに対してどのようなMobile Firefoxが提供されることになるのかは今後注視していく必要があるが、現状では、Firefox 3はこのままデスクトップ向けとしてリリースし、Firefox 4以降でMobile Firefoxが取り込まれることになりそうだ。リリースも2008年以降になるとみられる。
細かい内容になるが、XPCOM利用の削減、MMgcにおけるメモリ管理の統合などもモバイルデバイス対応に効果を発揮する。すでにGenko 1.9での作業は終わっており、1.9以降の取り組みとしてデバイスにおけるパフォーマンスの改善とメモリ利用の改善を実現するためにアーキテクチャを変更する時期に差し掛かっているともされている。
同氏の説明どおりにことが運べば、デスクトップとモバイルで同じFirefoxエクステンションが動作し、モバイルデバイスでXULベースのアプリケーションが使えるようになる日はそう遠い未来の話ではないかもしれない。
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