日本アイ・ビー・エムは、ブレード型ワークステーション新製品「IBM BladeCenter HC10」を発表した。同製品ではワークステーション機能をブレードに集約しており、エンドユーザーは、LANを介して、専用クライアント端末「IBM CP20 ワークステーション・コネクション・デバイス(以下、CP20)」で操作、作業を行う。発熱量を抑えるとともに、省スペース性、静穏性にも配慮。高性能製品とローエンド級の中間領域へと需要が拡大する金融・製造業のオフィス環境の分野で先行していくことを図る。

日本IBM システム製品事業 ブランド、マーケティング&SMB ディレクター ジェイソン・ダイズ氏

「IBM BladeCenter HC10」は、高度な演算処理をデータセンター側に集中させ、ネットワークで接続されたCP20側がワークステーションの機能を担い、キーボード、マウス、USBポートなどが配置されており、ハードウェアの機能で画像や入出力信号転送を圧縮、暗号化し転送する、新たな発想のワークステーションだ。3D CAD(Computer Aided Design: コンピュータ援用設計)のアプリケーションも利用できるという。

「IBM BladeCenter HC10」とCP20の交信の中核となるのは「IBM BladeCenter IGTA(I/O&Graphics Transmission Adapter)」だ。IGTAは、システムの中枢側から、ディスプレイの制御規格「DDC(Display Data Channel)」により、ディスプレイと認識される。あるいは、PCI Expressを通じて、USBハブと認識される。このため、IGTAは専用ドライバ、ソフトウェアを必要としない。

画像情報の圧縮処理機能を受け持っているのもIGTAで、ネットワークが混雑している場合など、帯域に制限が発生したような際には、IGTAが圧縮作業を制御、調整し、画像データの通信が損なわれないようにする。基本的にほとんどすべてのUSB機器を使用することができるが、ドライバが必要になる場合には、ポップアップ表示で告知する。

CPUはインテル Core 2 Duo プロセッサー(動作周波数は最大2.66GHz、フロント・サイド・バスは最大1066MHz)を採用、メモリは最大2GB×2、HDDは60GBで、ビデオアクセラレータは、「NVIDIA Quadro NVS 120M(プロフェッショナル2Dグラフィックス・アダプター)」、または「NVIDIA Quadro FX 1600M(アドバンスト3Dグラフィックス・アダプター) 」。対応OSは、「Microsoft Windows XP Professional」、「Microsoft Windows XP Professional x64 Edition」、「Microsoft Vista Business(32bit/64bit)」など。

ユーザー専用端末CP20は、ハードディスクを内蔵しない。また、USBポート経由の外付けハードディスクやメモリーキーへのデータの保管を制限する設定ができる。さらに、演算処理はサーバールームに設置されたBladeCenter HC10、あるいは接続されたストレージだけに保管されており、端末側からデータを外部に持ち出すことを防ぐなど、データ保全と情報漏えいの回避に注力している。

CP20の筐体は94(W)×174(D)×174(H)mmのA5版サイズであり、重量は1.1kg。省スペースを実現しているとともに、ファンなどの可動部品をがないため、同社によれば「従来のワークステーションに比べ端末側で9割の排熱、騒音をほぼ削減することができた」という。 ワークステーションは従来、科学技術分野に用いるような高度な計算や、画像を処理するための高機能端末としての側面が強く、用途はCAD(Computer Aided Design: コンピュータ援用設計)向けなどが多かったが、最近は金融分野など多くの業種に需要が広がってきている。適用できる領域の裾野が拡大する一方で、課題として、設置スペースの確保やオフィス環境における騒音、発熱への対策、データの管理、保守作業の煩雑さやセキュリティ態勢の整備などが課題として浮上している。

同社ではこのような懸念材料に対する解決策として「IBM BladeCenter HC10」を投入する。同社システム製品事業 ブランド、マーケティング&SMB ディレクター ジェイソン・ダイズ氏は「ワークステーションを利用するにあたり、セキュリティ、電力コストや騒音など環境と運用、維持・管理・保守、変化への迅速で柔軟な対応などが顧客の懸念だが、今回のBladeCenter HC10のモデルが、これらに対する解としてベスト」と話す。

日本IBM システム製品事業 マーケティング担当 藤本司郎氏

同社は、BladeCenter HC10の適用範囲として、それほど高い処理性能が必要ではない分野と、高性能機器が求められる分野の中間を見据えており、用途としては、工学設計アプリケーション、証券取引をはじめとする金融アプリケーション、地理情報システム・アプリケーション(GIS)、遠距離コラボレーションなどを考えている。同社システム製品事業 マーケティング担当 藤本司郎氏は「この領域は、ユーザー層が多く、2D-3D処理ができる水準のワークステーションへの需要があり、台数増加や発熱問題への要望が強かった」と指摘している。

ユーザー側に設置される専用端末CP20

IBM BladeCenter HC10の内部