HP Integrated Archive

日本ヒューレット・パッカード(以下、日本HP)は、電子メールなどのデータを安全に保管して活用するデータ保存ソリューションの新製品「HP Integrated Archive Platform(以下、HP IAP)」を発表した。独自開発のグリッドストレージ技術を採用、データが膨大になる一方であるメールの保存で、容量に依存しない高速な検索環境を提供し、2009年3月の会計報告から適用される日本版SOX法で、電子メールなどのデータ保存システムの整備を求められている株式上場企業などの需要に対応する。

「HP IAP」のグリッドストレージは基本的に、アーカイブ、検索エンジン、ファイアウォール、ドキュメント管理機能など、データの保存、処理は、「Smart Cell」と呼ばれるモジュールを単位として実行、分散処理される。このため、容量や規模の状況に応じ、「Smart Cell」を追加することで、容量や処理性能を拡張することが可能だ。使用するハードウェアのライフサイクルによって、システムの入れ換えが発生しても、「Smart Cell」単位で交換することにより、導入時と運用のコストを抑制することが可能で、グリッド導入までの時間の短縮と、維持管理費の削減につながる。

日本HP HPソフトウェア事業本部 BIO ビジネス事業部 プロダクト・マーケティング 平田伸一

同社によれば「HP IAP」は、アーカイブサーバ、検索サーバ、データベースなどが別々である従来の一般的なメールアーカイブ製品とは異なり、必要なハードウェア、ソフトウェア、さらにサービスまでを統合することにより、リファレンス情報を長期間保管する用途で、費用対効果が高いストレージを提供できるとしている。「長期保存となると、ストレージ/サーバーなどハードのライフサイクルが大きな課題となるが、この製品では、Smart Cellでの拡張ができる」(同社 HPソフトウェア事業本部 BIO ビジネス事業部 プロダクト・マーケティング 平田伸一氏)ことが利点となる。

検索では、WebブラウザかMicrosoft Outlookをユーザインタフェースとしており、高速性を維持するため、検索要求は「Smart Cell」にマルチキャストする形式で並行処理される。それぞれの「Smart Cell」では、検索のインデックスが生成され、それをメタデータ化し、キャッシュ上で実行した検索処理結果が、ほぼ1秒単位という短時間で応答する。このような分散処理により、データ容量が増加しても検索性能は低下しないという。

ドキュメント保管については、検索インデックスとドキュメントの関係を、「Smart Cell」が管理して、保管期間が終了した後は、ドキュメントと検索インデックスを完全に消去、ドキュメントは消去されているのに、インデックスだけが残存しているというような状況がなくなり、ストレージ効率が改善される。すべてのドキュメント、検索インデックスを「HP IAP」内部で管理することで、情報漏えいや不正消去、改ざんといったリスクを排除する。ユーザー管理機能で、アーカイブされたデータへのアクセスを管理しており、アクセスログで、アクセス時の処理状況を確認できる。また、Active Directoryと連携することで、同期したアクセス管理が可能になっている。

同社は従来、データ保存のソリューションとして「HP Reference Information Storage System(以下、HP RISS)」を販売してきたが、情報管理ソリューション分野を強化していく方針の下、製品ラインアップ名を「HP Integrated Archive Platform」と改名した。新製品「HP IAP」は、大企業だけでなく、中堅/中小などの規模の企業からの需要も想定している。従来の「HP RISS」と比べ「HP IAP」は、サーバの性能向上により、大容量化、省電力化を実現するとともに、低価格化を背景に、従来の製品で利用していたサーバより高機能、低価格のサーバに統一した構成になっており、最小構成で1,200万円からで、製品/保守価格は従来と比べ、約半分に設定されている。

日本HP HPソフトウェア事業本部 BIOビジネス事業部 IM営業部長の縄田勅範氏

同社は、新製品の投入と同時に、パッケージ化した導入サービス「HP Integrated Archive Platformコンサルティングサービス」の提供を開始する。システム状況の評価、実際の導入作業、オリエンテーションなどを行う。また、オプションの導入サービスとして、Active Directory、LDAP接続、アーカイブ、検索機能の性能拡張、容量拡張、バックアップ、レプリケーションなども用意している。このサービスでは基本的に、2 - 3カ月程度の期間で導入が可能になる。

同社は、アプリケーション開発やシステムの運用管理の効率化で、事業構造を最適化する「Business Technology」を大きな主題としており、「HP IAP」は、この発想に基づいた情報管理の役割を担っている。同社HPソフトウェア事業本部 BIOビジネス事業部 IM営業部長の縄田勅範氏は「HP IAPでは、Exchange ServerやDominoのユーザー層を視野に、メールの保管が焦点になるが、今後は、Oracleなどデータベースへの対応も考えている」と話し、さらに守備範囲を広げていく意向を示している。